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 その日以降、何かと理由を付けては俺は高梨さんの部屋へと足を向けた。  何よりも心配だったのだ。高梨さんは料理をまともに出来なさそうだし、美織ちゃんの相手をちゃんと務まるとも思えなかった。  それに、役職がある高梨さんは定時を過ぎることも多い。美織ちゃんは延長出来る保育園に通ってはいるものの、あまり遅くなると可哀想だ。  そこで俺は、高梨さんの好感度を更に上げる為にもお迎えも買って出る。  もっと好きになってもらって信頼関係も深くなれば、ちゃんと思ったことも言ってもらえるかもしれないという算段はもちろんあった。  そこまでしてもらう必要はないと、高梨さんは渋い顔で言ってきたが「可哀想じゃないんですか? どんどん友達が一人ずつ帰って行っちゃうんですよ。それを傍らで見つめる美織ちゃんが」と脅しをかけると言葉を詰まらせていた。  保護者以外が迎えに行く際は予め連絡が必要なので、高梨さんが残業になりそうな時は保育園に連絡を入れておいてもらった。  名刺と身分証をしっかりと持って、俺は保育園へ美織ちゃんを迎えに行く。  保育園の先生に一応名刺を渡すと、高梨さんの代わりだと伝える。 「わざわざ部下の方が、迎えに来てくださるんですね」  少し戸惑った笑顔を向けられ、言い訳に困ってしまった。確かにこんなことまでする部下はどこを探しても自分ぐらいだし、下手したら高梨さんがパワハラしているのだと思われてしまいそうだ。 「高梨さんとは仲が良いんです。それに、俺が無理やり申し出たことでして……」  苦し紛れな言い訳を、取り敢えずはしておく。  それ以上はさすがに突っ込んでは来ず、「お待ち下さいね」と言い残すと美織ちゃんを探しに教室へ入っていった。  上手く言い逃れられたのか分からなかったが、とりあえずホッと息を吐き出す。

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