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「あ、川神だ! りょーすけは?」  手提げ鞄を持った美織ちゃんが、駆け寄ってくる。 「まだお仕事なんだよね。だから先に帰って、御飯作って待っていようか」  俺は美織ちゃんと手を繋ぎ、ゆっくりと歩みを進める。 「ご飯なに食べたい?」  料理は好きで、基本的に自炊をしている。大抵のものなら、リクエストに答えられそうだった。 「美織の好きそうなもの、当ててみてー」  難しいクイズだが、ここは無難に「じゃあ、ハンバーグにしようか」と子供が好きそうなチョイスを口にする。  俺の甥っ子も確か、ハンバーグが好きだったはずだ。 「さすが川神! 分かってる」  美織ちゃんの手がギュッと強くなる。正解だったようで、ホッと胸を撫で下ろした。  途中でスーパーで買物をして、借りていた合鍵で部屋へと入った。 「川神はりょーすけとお友達なの?」  夕飯の支度をしていると、美織ちゃんがお絵かきをしながら声をかけてくる。 「んーお友達、かな」  まさか、恋人だとははっきり言えなかった。それに付き合っていると思っているのは、俺だけだったりして……悪い疑念に胸がズキッと痛んだ。  ちゃんと告白されたわけじゃない。ただ、高梨さんが口下手だから、キスしてきたことが告白だと俺はずっと思ってきた。 「好きなの?」  美織ちゃんの言葉に胸が鷲掴みにされ、ひき肉を捏ねていた手が思わず止まってしまう。  どういう意味での『好き』なのか分からなかった。友達としてなのか、恋人としてなのか、人としてなのか……。 「美織はりょーすけが好きだよ。少し怖いけど、優しいもん」  グルグルと色鉛筆が紙を滑っていく音が、静かな部屋に響いている。 「……そうだね。俺は凄く好きだよ」  それは確信を持って言えた。

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