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 夕飯の下準備を終えてから、美織ちゃんをお風呂に入るように促した。 「見ないでね」  俺に冷たい視線を向けて、お風呂に向かう美織ちゃんに苦笑いが溢れてしまう。  まだ五歳なのに、すでに自分を男として見てくれているようだった。  インターホンが鳴り、高梨さんが帰ってきたので出迎える。 「お疲れ様でした」 「今日はすまなかったな」  少し疲れた顔で高梨さんが、部屋に上がり込む。 「美織ちゃんはお風呂に入ってますよ。上がったら高梨さんも入ってください」  部屋に戻ると、夕食の準備の続きをする為にフライパンを取り出す。 「夕飯まで作ってくれたのか……何でそこまで……」  高梨さんが溜息混じりに言葉を吐き出した。  まるで呆れ返っているかの様子に、胸が鋭く抉られる。 「何でって……」 「川神も今日仕事だっただろ。有り難いけど、そこまでしてもらう義理はないから」  呆気にとられて言葉を返せない。何でそういうことを言われなくちゃいけないのか、理解が出来なかった。 「……えっ、俺たちって付き合ってるんじゃないんですか?」  口に出した後に、ハッとして後悔の念が込み上げてくる。これで違うと言われたら、立ち直れそうになかった。  虚を疲れたような顔で高梨さんが俺を見つめた後、視線を俯かせた。  まさか本当に俺の早とちりで……あのキスは本当は酔った勢いで、別に俺を好きなわけでもなかったというのだろうか。じゃあ、なんであんな真似をしたのか。  頭の中が真っ白になり、ショックで足元がぐらつく。 「お腹空いたー。あっ、りょーすけ帰ってきたんだ」  間延びしたような美織ちゃんの声にハッとして、止まっていた作業を進めていく。 「ごめんね。今作るから」  モヤっとした気持ちを抱えたまま、フライパンを熱してハンバーグを焼いていく。 「りょーすけも、早くお風呂入ってきなよー」  美織ちゃんの追い立てるような声と、「今入る」という高梨さんの低い声が背後で聞こえた。

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