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第3話
ガサッ。
大きな音をたて、香しい花を愛でながら、歩き回る男が一人。
「なにやつだ?!」
「これはこれは、夜の王」
慇懃な礼をした男は、スッと目を細めた。
「それで?今宵は何の用ですか……俺と一夜を過ごしに来た、とか?」
「馬鹿をいうな、このエロ神が!」
「ふふふ。相変わらず、お堅いですね」
花を撫でる指先、此方を見る目すら、いかがわしい。
「其方の誘いを受けるものは、天地に充ちておろう。そんなことより、羊を知らないか?」
「ああ、あの元気な子なら、随分前に此処を通り抜けて行きましたよ」
「どちらへ行った?」
「あの湖の辺りかな」
「あれの脚は短い。よもや……」
「ご心配には及びますまい。万一、彼処で何かあれば、きっとセレネースが騒ぐはず。汀で少しハメを外しているのでしょう」
「だと良いのだが」
我は官能の神に別れを告げ、湖の畔に向かった。
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