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第5話
うっすらと青く硬い壁の中に、生気の無い羊が見えた。
「おい。この氷は何とかならんのか?」
「それはグレイシャス山の氷。日の神の剣でなくては、砕けません。それに、よしんば砕けても、今のあの子の状態は普通ではありません。花の蜜で作った薬と温かい寝床が必要です」
「日の神の剣……」
我の兄にして、最高神である日の神は、傲慢不遜で鼻持ちならない存在だ。
一日のはじまりのひととき、顔を合わせることすら厭わしい。
そんな兄に、頭を下げ、剣を借りなくてはならぬとは……
しかし、みすみす我が下僕が命を落とすのを指をくわえて見ている訳にはゆかぬ。
何としても、剣を手に入れる!
そう決意した我は、兄の元へと向かった。
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