6 / 11
第6話
「兄者、折り入って、頼みがある」
我は眩しさを堪えながら、天上の最上階へと踏み込んだ。
「こうして言葉を交わすのは随分と久方ぶりだな、我が弟よ。相変わらず、血色が悪い」
「そんなことは、どうでも良い」
「いや良くない。何か心配ごとがあるのか?たとえば、飼い犬が逃げた、とか?」
遠回しな言い方が勘に障り、腸が煮えくりかえる。
「知ってらっしゃるなら、話は早い。どうか剣を貸して下さい」
「ならぬ。あれは禁を犯したのだ。そして、いまその罰を受けている最中だ」
「では、その罰とやらは、主である私が受けましょう」
「甘いな!神である身がそのように甘くては、示しがつかぬ」
「では、どうしろと?」
「あれに首輪をつけろ。そして、律するよう、躾をほどこせ」
「しかし、兄者。それは、彼の者の気質にはそぐわぬことではないか、と」
そうまでして、手元に置くは、不憫の極み。
それに、生きとし生ける全てのものを愛で、守るのも、我らが務めだ。
「ならば。我が直々に罰し、首輪をつけてやろう。そこを退け!」
「いいえ、退きません!」
スラリと抜かれた剣が見えた。
四方に眩い光が充ち、我が視界は真っ白に染まった。
ともだちにシェアしよう!