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第6話

「兄者、折り入って、頼みがある」 我は眩しさを堪えながら、天上の最上階へと踏み込んだ。 「こうして言葉を交わすのは随分と久方ぶりだな、我が弟よ。相変わらず、血色が悪い」 「そんなことは、どうでも良い」 「いや良くない。何か心配ごとがあるのか?たとえば、飼い犬が逃げた、とか?」 遠回しな言い方が勘に障り、腸が煮えくりかえる。 「知ってらっしゃるなら、話は早い。どうか剣を貸して下さい」 「ならぬ。あれは禁を犯したのだ。そして、いまその罰を受けている最中だ」 「では、その罰とやらは、主である私が受けましょう」 「甘いな!神である身がそのように甘くては、示しがつかぬ」 「では、どうしろと?」 「あれに首輪をつけろ。そして、律するよう、躾をほどこせ」 「しかし、兄者。それは、彼の者の気質にはそぐわぬことではないか、と」 そうまでして、手元に置くは、不憫の極み。 それに、生きとし生ける全てのものを愛で、守るのも、我らが務めだ。 「ならば。我が直々に罰し、首輪をつけてやろう。そこを退け!」 「いいえ、退きません!」 スラリと抜かれた剣が見えた。 四方に眩い光が充ち、我が視界は真っ白に染まった。

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