8 / 75
第8話
二人の心
あれから翔は色々なことを考えた。子供の頃、中学の頃今まで沢山の事があった。
『暇つぶしだよ』
その言葉が耳に残る。 人を好きになるのはまだ怖い。裏切られたら…遊びだったら…。
榊君は僕の事をよく見ている。 友達の中に入れずにいる僕に声をかけて誘ってくれたり、寮で僕が着替えているときはこちらを見ないでいてくれる。 気にかけてくれている優しさがとても心地いい。 僕なんかが彼のそばに居ていいんだろうか。 翔はそう思い始めた。
榊はできるだけ翔の負担にならないようにしていた。 内心では、抱きしめたいと思っている。 翔に触れたい。身体にそして心にも…。榊は何をしてても翔を見てしまう。 目で追っている自分にため息が出る。 今日は翔の顔色が悪い、最近よく眠れていないみたいだ。 これから体育だが大丈夫だろうか? 休ませたいが、翔は嫌がるだろうか?
「翔、体調が悪いなら体育は休んだ方がいいんじゃないか?」 声をかけられた翔はしばらく考えると「大丈夫だよ。なんでも無いから…」と答えた。
榊は心配そうに翔の顔を見ると、無理するなよ。と声をかけて教室を出た。
体育の授業はバスケだった。 チーム分けして順番に試合している。 翔のチームは脇で待機中、榊のチームは試合中だった。 スタイルも運動も文句なしの榊は皆んなから声援を受けている。 翔もその姿を目で追っている。
『彼のそばに居たい。』 そんな感情が翔の中に溢れてきた。
試合終了のホイッスルが鳴り翔のチームが呼ばれた。 翔は勢いをつけて立ち上がった。
『あれ、目が霞む…耳鳴りがする…行かなきゃいけないのに…誰かが僕の名前を呼んでいる…。』
「翔! 翔!しっかりしろ、おい!翔!」
ともだちにシェアしよう!