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第8話

二人の心 あれから翔は色々なことを考えた。子供の頃、中学の頃今まで沢山の事があった。 『暇つぶしだよ』 その言葉が耳に残る。 人を好きになるのはまだ怖い。裏切られたら…遊びだったら…。 榊君は僕の事をよく見ている。 友達の中に入れずにいる僕に声をかけて誘ってくれたり、寮で僕が着替えているときはこちらを見ないでいてくれる。 気にかけてくれている優しさがとても心地いい。 僕なんかが彼のそばに居ていいんだろうか。 翔はそう思い始めた。 榊はできるだけ翔の負担にならないようにしていた。 内心では、抱きしめたいと思っている。 翔に触れたい。身体にそして心にも…。榊は何をしてても翔を見てしまう。 目で追っている自分にため息が出る。 今日は翔の顔色が悪い、最近よく眠れていないみたいだ。 これから体育だが大丈夫だろうか? 休ませたいが、翔は嫌がるだろうか? 「翔、体調が悪いなら体育は休んだ方がいいんじゃないか?」 声をかけられた翔はしばらく考えると「大丈夫だよ。なんでも無いから…」と答えた。 榊は心配そうに翔の顔を見ると、無理するなよ。と声をかけて教室を出た。 体育の授業はバスケだった。 チーム分けして順番に試合している。 翔のチームは脇で待機中、榊のチームは試合中だった。 スタイルも運動も文句なしの榊は皆んなから声援を受けている。 翔もその姿を目で追っている。 『彼のそばに居たい。』 そんな感情が翔の中に溢れてきた。 試合終了のホイッスルが鳴り翔のチームが呼ばれた。 翔は勢いをつけて立ち上がった。 『あれ、目が霞む…耳鳴りがする…行かなきゃいけないのに…誰かが僕の名前を呼んでいる…。』 「翔! 翔!しっかりしろ、おい!翔!」

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