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第9話

翔の決断 「貧血ね、それと寝不足だと思うわ。良くなるから心配ないわ。」 『誰かの話し声が聞こえる、誰だろう…榊君に会いたい。榊君はどこ?あゝまた霧の様に白くなっていく…身体が重い。 』翔は遠のいていく意識の中右手が暖かい事に気がつく。 『そうか誰かが握っているんだ、もう少し、もう少しだけこのままでいたい』 翔は安心して眠りについた。 『あれ、ここは僕のベットだ。 どうして?』スイッチが切り替わる様にスッキリと目が覚めた。 暗いけど自分の部屋だとはわかる。 確か体育の授業中だったはずだが何故部屋に? その時部屋の扉が開いた。 中を伺う様に人が入ってきた。 廊下が明るいせいか、顔は影になってわからない…。 「榊君?」 かすれた声で翔は声をかけた。 「起きたのか?気分はどうだ?」 榊はベットに腰掛けると翔の頭を撫でた。 『やっぱり榊君だ、言わなきゃ榊君の事が好きだって!』 なかなか口に出せずに黙り込んでしまった。 それでも何度も深呼吸して、 「僕は…僕は…。」 榊は黙って聞いている。翔が話してくれるのを待っている。 榊はその沈黙ですら愛おしい…。

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