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第20話
どうして?
「翔?どこだ!」ここには居ないのか? 俺はかけるのあとを追って林まできたけど姿が見えない。
かすかに泣き声が聞こえる。俺は声のする方へ急いだ。
「翔?」いた!見つけた! でも様子がおかしい、なんで逃げるんだ! 翔の身体がグラっと揺れて崩れる。
「翔!しっかりしろ!翔!」 俺は翔を抱えて声をかけたがぐったりして返事をしない。
翔の身体は熱かった。額を触ると汗をかいていた、体温が高い。 とにかく部屋に連れて行かないと!俺は翔を抱きかかえて足早に寮に向かった。
どうしたんだ? なんで逃げるんだ? どうして服がボロボロなんだ? どうしてこんな事になったんだ? 考えても答えて欲しい翔は俺の腕の中でぐったりしている。
幸い部屋に着くまで誰にも見られずにすんだ。 クラス委員が抜けて騒いでいるかもしれないが、今は翔が優先だ。
ベットに翔を下ろして、濡れたタオルを額にのせた。 よく見ると手首や足首に赤く擦れた跡がある。服を少しめくると、所々赤く擦り傷がある。何故こんな事に…俺がついていたら…
自分に腹が立つ、翔のことを守ってやりたいのに! それより今は熱を下げないと!
さっきからずっとうなされて俺に謝ってる。
「ゴメン…ゴメン夏目…」何があったんだ? このあざは? いろいろ聞きたいことはあるけど、今は身体を治す事が先決だ。 氷水と薬がいるな。
榊は保健室に行って必要な物を揃えると部屋に戻った。 まだ寝ている翔を起こさないようにドアを締めるとベットを見てびっくりした。
「翔がいない!」 そんな動ける筈がないのに…?どこへ行ったんだ? ベットを触るとまだ暖かい。そんな遠くに行ってないはず…探さないと。 あんなに熱が高いのに何を考えてるんだ! 榊はすぐに部屋を出て今来た廊下とは逆に走った。 階段を降りると生徒が立ち話をしている、「今ここに翔…斎藤翔が来なかったか?」 生徒は顔を見合わせている。
「いや、来てないよ。」 一階に行ってないなら…もしかして…上の階か? 寮は三階建てで、上の階は二年が使っている。あとは屋上だけだが、そんな所に行っているのかわからない。
でも…もしかして!
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