33 / 75

第33話

胸騒ぎ 田辺がいない事に気付いた榊は落ち着かない。 まさか翔の所じゃ…そう思うといてもたってもいられず、近くの生徒に 「悪い、俺さ腹が痛いから寮に戻って休むわ!」と伝えると相手の返事も待たずに鞄を持って教室を出た。 翔の事が気になり足も自然と速くなる。 近いはずの道のりも今の榊にはとても長く感じた。 部屋に着くまで誰にも合わなかった。榊は少し安心した、自分がどれだけ慌てていたか…気にし過ぎだったか… 榊は鍵を持っていたが、翔におかえりと言って貰いたくて小さくノックした。 だが帰ってきた言葉は榊がの望んだ言葉ではなかった。 「いやぁ…!どっか行って!」 翔の声に榊は慌てて自分の鍵で部屋に入った。 「どうした翔!大丈夫か?」 翔はベットで布団を被り震えていた。榊は翔の横に腰を降ろすと布団の上に手を置いた。 「夏目?なの…?」泣きながら翔が榊の首にしがみついてきた。 「どうしたんだよ、怖い夢でも見たのか?」 翔の背中をさすりながら落ち着かせた。 「だ、誰か、きた、んだ…」泣きながら翔が答えた。 「なんだって!大丈夫だったか?」 翔に怪我などが無いか確認して改めて抱きしめた。 さっきまで気にし過ぎかなどと考えてた自分に腹が立つ!もう少し早く帰ってきたら… 「翔、怖かったな…もう大丈夫だ。ごめんな遅くなって。」翔は榊の胸で首を振った。 まだ震えている翔の頬に手を這わせその小さな唇にキスをした。 次第に翔の身体からちからが抜けて落ち着いた。 良かった、夏目だった。怖かった…もしかしたらまたあの人達かも…そう思うとまた震えてしまう。夏目はそんな僕に優しかった。「大丈夫だ」と言ってくれた、また僕は夏目に迷惑かけちゃう…どうしよう…さっきの人は誰だったんだろう? 僕が部屋にいるって知ってたんだよね? 僕が聞いても名前言わなかった。どうして?やっぱりあの人達? 僕が俯いて考えていたら夏目が心配して覗き込んできた。 いけない…しっかりしないと…。

ともだちにシェアしよう!