49 / 75

第49話

数回のコールの後、竜崎が電話に出た。 「珍しいな、いや初めてか。どうしたんだ? 夏目の用事か?」 榊以外で相談できる人が居ない翔は竜崎の声を聞いて少し安心した。 「ごめん。夏目…知らない? ちょっと相談したいことがあるんだけど携帯に出ないんだ…。」 「さぁ…今日は会ってないな。 急ぎなのか? また厄介事なのか?」 「ち、ちがうよ! ありがとう。また連絡するよ!」 翔は、無理やり話を終わらせると電話を切った。 『あんまり二人に迷惑をかけるのはよそう…自分のちからでなんとかしてみよう。』 もう18時までそんなに余裕はない、翔は急いで私服に着替えると榊にメモを残した。 『心配しないで、すぐに戻ります。翔』 翔は携帯と部屋の鍵をポケットの中にしまうと特別教室に向かった。 襲われたあの日以来翔は特別教室の付近には近ずいていない。 榊に一人行動をするなと言われていたから、一人で出歩くことも無かった。 「一人で来てしまったけど…夏目、怒るかな…」 そんな心配をしながら時間が無いので全力で走った。 特別教室の建物が見えてきてやっと速度を落とした。 時間を確認する為に携帯を取り出すと画面を開いた。 「うわぁ!びっくりした。」 タイミングよく着信が入り画面には夏目の名前が表示されていた。 「もしもし夏目?あの」 「バカ! 今どこにいるんだ!」 翔が話終える前に榊が叫んだ。 思わず携帯を落としそうになるぐらい翔は驚いた。 「ごめん…今、特別教室の近くにいる。すぐに帰るつもりだったんだけど…」 翔はどう言っていいかわからず口ごもっってしまう。 一人で行動して怒られるのはわかっているが何から話たらいいか言葉が出てこない。 「すぐに戻って来い! そこをすぐに離れるんだ! いいなすぐにだぞ、俺もすぐに行くから 。携帯は切るなよ。そのまま戻って来い!」 「うん、ごめん。」 翔は言われたとうりに通話のまま今来た道を引き返した。

ともだちにシェアしよう!