63 / 75
第63話
「おーい!翔くん、何をそんなに怒っているんだよ?」
榊は翔に声をかけたが、翔は黙って一人で先に歩いて行く。 榊は翔に追いつくと腕を掴んでもう一度声をかけた。
「どうしたんだよ? 何が気に食わないのか言ってくれないとわからないだろ!」
翔は俯いていた顔を上げた。
「じゃあ、ハッキリ言わせて頂きます! 夏目は僕が心配なのは分かるけど、流石に何度もトイレに付き合わなくてもいいから! クラスでクスクス笑われたの気付いてる? こんなに人がいたら呼び出しとか無いと思うし僕も気をつけてるから少し落ち着いてよ」
翔は言い切ってからまた俯いてしまった。そして小さく『ごめん』と呟いた。
「俺こそ少し干渉し過ぎたかもな、ごめん気を付けるよ。」
翔は榊がしおらしく謝っているのがなんか可笑しくて吹き出してしまった。
「二人で謝ってこれでもうこの話は終わりにしない? 榊が気にしてくれてるのはわかったし」
榊はホッとして自分が如何に今回の事で余裕が無くなっていたか気がついた。
「じゃあ、仲直りした事だし、寮に戻るか!」
二人は一緒に歩き出した。 寮までの道のりで榊の携帯の呼び出し音が微かに鳴った。
「何?メール?」
翔が榊の携帯を覗き込んだ。
「誠二からだ、調査報告だってよ。」
翔が怪訝そうな顔をした。
「竜崎くんにそんな事させてるの? もう二人はどんな関係!」
あんまりにも頻繁に二人が連絡を取っているのが、翔には何かわからないがイライラしていた。
「翔、もしかして気になるのか? 俺と誠二はただの腐れ縁だよ。心配するな!」
「別に心配なんか、別になんとも思って無いけど…」
自分が何でこんな事を思っているのか翔は黙ってしまった。
翔が考え込んでいる姿を見て榊は小さく吹き出した。
「翔、もしかして誠二に嫉妬してるのか?」
今まで出来るだけ他者との交流を避けてきたからこんな感情を忘れていた翔は榊の言葉に驚いた。
「嫉妬…僕が?」
「そうだよ。今、あきらかに俺と誠二の関係を疑った。自分で気付いてなかったのか? そうか天然か! 」
榊は嬉しかった。 それだけ自分の事を考えてくれているのがたまらなく愛おしかった。
ほんの些細な変化だが翔の気持ちが自分に向いているのが嬉しかった。
「もう知らない!」
榊のにやけた顔を見て翔の顔が赤くなった。
ともだちにシェアしよう!

