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第2話

「お金は自分で稼いで、俺にコーヒーを買ってきて」 「どう……やって……?」  思わず口を開いていた。  はっきりと聞かなくてはならない。でもはっきりとなんて、聞きたくない。 「お膳立てはしてあげるよ。四つん這いになってお尻向けて」  彼は答えを明かさず、言葉だけで俺の姿勢を変える。  促されるまま、従うしかなかった。小石を踏む手と膝の痛みを気にする余裕もなく、彼の次の挙動が気がかりだった。  そろそろと背後を窺うと、今度は胸ポケットから、ペンを取り出した。サインペンか、油性のネームペンに見えた。  だんだんと、嫌な予感が現実に近付いていく。 「ちゃんと読み上げながら書いてあげるね。えーと……『精液便所』『1回10円』『中出し自由』……あと何書く?」 「っ……」  さすがに、泣きそうだった。  要するに、マワされて来いって事だ。  それも10人以上に。屈辱的な看板を掲げて。 「みんなが使ってくれるようなアピールしないとだよねえ……じゃあベタだけど『チンポ大好き』『マゾ奴隷』あとは……やっぱ『淫乱』も外せないかなぁ~。ビスは体が大きいから、書くところいっぱいあっていいね」  尻や背中に、細い何かが這う感触はあった。  本当は書いたフリをしているだけで、口だけなんじゃないか、そんな希望を微かに抱いた。けれどもしそうだったならば、今読み上げられたような文言を自ら口にして来いと言われ兼ねない。  だったら、まだ犬を演じていた方が……  犬?  これは本当に、犬のやる事か?  ビスケットだからビスだ、などと名付けられた時は、まだ犬だったかもしれない。  でも今は? だって恋人だった筈の関係も、いつしかおかしな事になっていた。それなら、犬と飼い主という関係も、変化していないとは限らない。  だって今、彼が発した言葉のどこかに、犬を表すワードはあったか?  思い出してみろ、真っ先に告げられた言葉を。  …………それじゃあ、俺は…… 「よし、じゃあこれは外しておいてあげる」 「ヒァアッ……!!」  唐突に、尻尾のついたディルドが抜かれた。  平均的なペニスよりも大振りなそれを一気に抜かれると、悲鳴を上げてしまった。  尻尾が、なくなった。  犬だから、と装着されていた尻尾が。  俺は……俺は、もう…… 「ああ、いいね。丁度ぽっかり口が開いてるよ、便器ちゃん」 「…………っ」  そこまで、落ちていたのか。  だから、素性も知れないヤツらに犯されて来いと。  それはちょっと……堪えるな。  でも、どうしてだろう。抗議する気も、異論を唱える気も、愛想を尽かす気もないのは。 「持っていれば使うかもしれないし、これは口で咥えてな。なんなら使ったら塞いで貰って? 遊歩道ザーメンだらけにするわけにもいかないしね」  引き抜かれたディルドは、口に詰め込まれた。  尻尾もついて重く大きいそれに、歯を立てる。本物ではないのだから、そこは容赦して欲しい。  ディルドにこれだけ潤滑剤が付着しているという事は、直腸もまだ乾いてはいないだろう。  酷い怪我は、しない筈だ。 「さ。それじゃ行っておいで」  パン、と尻を叩かれる。  ああ……行くしかないんだな。 「コーヒー、待ってるね」  そんな事を言われてしまったからには。
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