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第2話
とは言え、熱めのシャワーを浴びている間、考えるのはショーンのことばかりだった。
頭を洗い、身体を洗い、モコモコの泡で洗顔しながら、思わずため息が出る。口元から小さなシャボン玉が飛んで、すぐに弾けた。
極度の人見知りで、内気な性格な自分とは違い、ショーンは社交的で人付き合いが上手い。「寝起きのマシュー・グッド」似の恵まれた容姿も相まって、酒の席ではいつもひっぱりだこだ。彼がいるだけで場が明るく華やかになり、愉しげな笑い声で溢れる。
時には妬まれ、時には彼の奪い合いが生まれるため、つくづく罪な男だと思わざるを得ないが、総じて彼の評判はとても良い。彼の社交性の高さは天賦の才だろう。
……ショーンのことを信じている。信じているが、未だに不安になってしまう。
ショーンが同性愛者だと明かしていても尚、彼にしなだれかかる女性がいることを、ポールは知っていた。結婚している、夫がいると話しても、一夜だけの過ちを持ちかけてくる男どもがいることも。
と同時に、ショーンがそういった誘惑に一切なびかず、きっぱりと断り通していることも、知っていた。自己申告はしないが、こちらが訊ねれば、彼は洗いざらい答えてくれるのだ。聞いていて気分が良いものではないが、彼と結婚した以上、こうなることは覚悟はしていたし、伴侶とは言え彼をきつく束縛するのも躊躇われる。だからポールは彼の誠実さと、自分たちがこれまで築いてきた時間と信頼と愛を信じることにしていた。
それでも、それでもやはり、大切な人が誰かから言い寄られるのは気に入らない。何だか胸のうちがもやもやして、舌打ちが出る。顔を覆う泡を洗い流してからも、ポールはその不快感を打ち消したいがために、その場に突っ立ってシャワーを浴び続けた。けれども、気分はちっとも良くならなかった。
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