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炊き込みご飯
「お邪魔しまぁす」
ボクは初めて『マンション』にやってきた
それなりにいいところらしく,それなりに広いらしい
ボクは先輩について行ってリビングに顔を出す
うーん…ぼくの部屋の1/3くらい?
マンションにしては広いらしいけど…
「適当に座っとけ」
「はーい」
ボクはソファに飛び乗るように座る
ふかふか…!
これは正真正銘ウン十万はするよね!なんて鑑定をしてみるけど実の所は分かるわけもない
「好き嫌いは?」
「特に無いよ~ あ,そうだ…矢野に電話してもいいですか?」
「矢野?」
「はい,うちの…というかボクら双子の専属使用人なんです…泊まるって伝えとかないと矢野,心配症だから」
ボクがにへっと笑顔を向けると先輩は一瞬眉間に皺を寄せるも「好きにしろ」とキッチンと睨めっこを始めた
ボクは不思議に思いながらも携帯を取り出し電話帳を開いては『柊ちゃん』と書かれた番号へ電話を書ける
『はい…どうしましたか?五月様』
「柊ちゃん~」
『勤務内です,矢野とお呼びください』
「にひひ…相変わらずお堅いねぇ…そうそう矢野,ボク今日お泊りすることになったから~」
『お泊まり…ですか?』
矢野の声が少し落ちる,
多分心配してくれてるんだと思う
「大丈夫だってー!仲のいい人の所だから!それよりむっちゃん何してる?一応ボクから言っといた方がいい気がして」
『六月様は……今勉強に集中なさってるので…私から後で伝えておきます』
「ん~そう?珍しいね…むっちゃん……まぁ,いいや,よろしく頼むよぉ~」
ボクは言い切ると通話を切り先輩の方へ目を向ける
先輩,ご飯自分で作るんだなぁ…
まぁ,むっちゃんも料理するの好きっぽいから驚きはしないけど意外…
「どうした」
ボクがぼーっと先輩を見詰めてたら両手にお皿を持った先輩がキッチンから出てきてハッとする
わー…ボク見つめちゃってた!?恥ずかしいなぁ…
「料理してる所につい見惚れちゃいました…」
「ふ~ん」
何言っちゃってんのボク!?気持ち悪いよ!!
ああ…もう,恥ずかしいなぁ…
「待たせるのも悪いし,簡単なもんだけど。口に合わなかったらすまないな」
そうして先輩がボクの前に出したのは牛肉と野菜の炒め物と炊き込みご飯
凄く美味しそうな匂いがする…
「ボク,炊き込みご飯って昔行った定食屋さんで食べて以来なんですよ…」
目をキラキラ輝せあの日食べた炊き込みご飯を思い出す
ホクホクしてて味が染みてて凄く美味しかったなぁ…
「ふぅん…まぁ,それには勝らないだろうが味わって食えよ」
と先輩なボクにお箸を渡してくれた
「はい!戴きます!」
ボクは早速ご飯を口に運ぶ
フワッと醤油の香ばしい匂いが口の中で広がりボクの味覚を満たしてくれる
「美味しぃ!」
あの時食べた味に何となく似てる気がするけど炊き込みご飯ってそういうものなのかな…
ボクは美味しさのあまり思わず頬に手を当てる
「自分で味付けたんですか?」
「嗚呼…朝に仕込んで昼に炊いて…時間置いて温め食うのが美味いんだよ。味は昔教わった通りにしてる」
「教わった…?」
ふと不思議に思って問いかけるも先輩は黙りしたままご飯を食べ進めていく
ボクはスッキリしなかったけど「ま、いっか!」と再度ご飯を口へ運んだ
やっぱり美味しい…
勿論野菜炒めも美味しかったし,矢野以外の料理で満足したのって久しぶりかもしれない
ボクもむっちゃんも美食家だから…
はぁ…毎日先輩の手料理食べたいなぁ……なんちゃって
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