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はじめてのキス
「んぅっ……、んん」
親友とのキスは甘かった。
茅葺が一度も聞いたことのない甘く湿った声が佐原の唇から時折漏れていた。それがやけに鼓膜を響かせて身体中の血液がすごい速さで巡っている錯覚を起こす。
「苦し……、トォ、ル……」
茅葺はあまりにも鈍感な自分に辟易していた。
部屋に居座るのも傍に居たいのも佐原が自分に優しかったからだけじゃなかった。名前で仲良さげに呼んだあの女の子に自分は単純に嫉妬したのだ。
特別な意味で自分は佐原を好きだった。自分はただ独占したかったのだ。この唇をこんな風に塞いでしまいたかったんだと――。
すっかり腰に力が入らなくなった佐原をベッドに組み敷き、さらにくたくたになるまで口付ける。
「もう……、やめ……恥ずかしい……」
真っ赤に逆上せた顔で可愛く佐原が告げるから茅葺には完全に逆効果で終わった。茅葺の顎を押し退けてきた力の入って居ない指を口で捕まえてやわやわと甘噛みしてやる。
「かわいい。泉巳」
「阿呆かっ!」
照れ隠しなのか佐原は茅葺に両腕を回してしがみ付き、自分からキスしてみせた。
猫の目のように瞳をくりんとさせて佐原は茅葺のすることをじっと見つめた。
「なに? ガン見し過ぎでしょ」
「えっ……と、あの、俺たち、する、の?」
「なにを?」
「なっ、なにを? えっ、あ、うー」
「泉巳可愛すぎでしょ」
「ソレヤメロッ!」
余裕ぶって笑う整った顔の悪友に腹が立ちながらも心臓はうるさいくらいに佐原の中で暴れていた。
目の前の光景が佐原には想像を超えていて、恥ずかしさで気を失ってしまいそうだった。いや、失ってしまいたかった。
今日の昼までは何食わぬ顔で親友然としていたくせに、その親友は今自分を裸にして身体中に口付けては楽しげにこちらの反応を伺っている。
こんな平たい胸の何が楽しいかわからないが尖った場所を吸われると腰の奥が電気でも浴びたように痺れてビクビクと勝手に浮いた。
茅葺は次第に身体を下にずらして行き、臍の周りをぐるりと舌で舐め回し、半分起き上がった佐原の中心に舌を這わせた。
「龍ッ……」
「うん、いや?」
自分の股間で茅葺が待てを言い渡された飼い犬のように心許なげな目線を送ってくるので佐原ははっきりダメとも言えずに終わる。
「いや、じゃ、ない……」
結局それしか選択肢がなかった。
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