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第4話 鎮魂の丘にて

それから、和葉とワイルド系&インテリ系の3人は このブリタニア王国の偉大なる第25代目国王 陛下の居城・ウォートン城、そして城下の町を 見渡す事が出来る小高い丘の上にやって来た。 和葉はあの診療所からここまで馬車でやって来る 道すがらに垣間見た町の様子だけで、 ここは今まで自分が暮らしていた世界とは全く違うと、 理解すると共に、こんな大掛かりなドッキリ、 いくらあつし達でも出来ないだろうと納得。 ……しかし、それならば 「じゃあ、どうやったら俺は元いた世界へ帰る事が  出来るんだ?」 「あぁ、それは ――」 と、インテリ系が何か言いかけたのを、 ワイルド系が手で制し、代わってワイルド系が 和葉に、 「お前のいた世界じゃ”旅”はしないのか?」   いつの間にか ”キミ”が”お前”に変わって、   随分と馴れ馴れしい奴だ、と内心ムッとしながら   和葉は答えた。 「旅? そりゃ、たまにするけど……」 「じゃあ、ここでの生活もちょっとした”旅”だと  思えばいい」 「……」 「きっと、滅多に体験出来ないすっごい事が  盛り沢山だと思うぜ」   パチリ ―― ワイルド系はウィンクを送った。   その仕草に思わずドキリとする和葉。   (バカ、なに動揺してんだよ。    奴はどうサバ読んだって高3じゃん。    ナリはデカいけど) 「って事で ―― 改めて宜しく。  俺はエドワード。親しい者達からはエディと  呼ばれている。で、こいつは――」 「ベネットさんね。俺は羽柴和葉です」 「は、し……はし、ばか……」 あ ―― 変な所で区切らないで欲しい。 子供の頃 ”ばかずは~・ばかずは~”と 囃し立てられ、虐められた記憶は 今でもちょっとしたトラウマなのだ。 でも、この”エディ”と名乗った青年に、 日本人特有の名前は発音しずらいらしく、 エディは”う~ん……”と小さく唸り、 黙りこんでしまった。 すると、インテリ ―― 改め、ベネットが、 「あの ―― キミの暮らしていた国では漢字という 言語があるでしょう? その漢字ではどう書くの ですか?」 和葉はその場にしゃがんで近くの小枝を取り、 地面へ自分の名前を漢字で書いた。 すると、エディが途端元気を取り戻し、 「この字なら知ってるぞ!  この前、語学の授業で習ったばかりだ ――  ”葉っぱ”という意味の字だろ?」 「えぇ、そうです」 「じゃ、決まった」 「は?」 「この世界で暮らす時のお前の名は”リーフ”だ。  これなら俺でも言いやすい」 「リーフ……」 「ほ~う、リーフ、ですかぁ……如何です?  異界のお坊ちゃん」 (異界の、って ―― 俺からすれば、あなた達の  住むこの世界の方が異界なワケで……けど、  ま、いいか) 和葉 ―― 改め、リーフはニッコリ微笑んだ。  

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