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第5話 キミ住む街へ

もうすぐ陽が暮れるという事でその日は宿に泊まり、 翌日の朝早く、エディの領地であるブリタニア領 サムイルの街へ出発。 途中、国王陛下の宰相を務めるという、 エディの従兄弟、ガブリエル(ゲイブ)も合流。 それから1日後の夕方、 エディの居城・ランカスター城に到着した。 街境から遠目に見た時はそうでもなかったが こうして間近に見ると、また違った赴きがあって それは想像を絶する大豪邸で ―― 『何処の世界にもお金持ちって  ホントにいるんだなぁ~』と   妙なところで納得した。 どこからどこまでが敷地なのか、 わからないくらいひろ~い所だった。 ココって、ヤフースタジアム何個分なんだろ?  なんて庶民な疑問が浮かぶ。 門番さんがいる、 ドデカイ門(大手門)をくぐってから、 馬車でゆうに10分は走ってる。 あの門をくぐってから、車道の隣は、 鬱蒼と木の生い茂る森で、 片方はずっと大きな川が流れていた。 車道を外れて、あの森の中に入ったら…… 出ては、来られなさそう。 かと言って、こっち側の川も、川っていうか、 もう向こう岸がようやく見えるか見えないか くらいの……多分、お堀ってやつだよね。 そもそもお堀って、外敵の不法侵入を阻む為 作られた物だから、半端なく深いんだよね? 初めに見えた建物の集落でエディとベネットが 先に降り、馬車は俺とゲイブだけを乗せてそのまま 敷地の奥へと進む ―― ”……このゲイブって人、昨日会った時からずっと  眉間に深いシワが寄ってて、いかにも不機嫌そうで、  何となく苦手なタイプ……” 「あぁ―― 因みにあそこら辺一帯の敷地をまとめて  我々は曲輪(くるわ)と呼んでいます」 「は、ぁ……」 お堀の脇の道を走る馬車内で、 向こう側に見えてるお宅の長くて高い塀を見ながら  『刑務所みたい』って思ってた。 それと同時に俺は、 何だか不思議な感覚を感じてもいた。 ……ココ、ずっと前にも来た事があるかも。 そんな訳あるハズないのに、 車窓を流れる風景を見ながら、 漠然とそう思っていた。 俺的なイメージとして、このテの異世界では ”魔法”ってやつが当たり前にあって、 移動なんかは呪文ひとつであっという間 だと思ってた。 けど、基本的に魔法=魔力は魔族及び妖精達の 専売特許的技術で。 人間がそれと同等の異能を使いたいなら、 魔族が魔力をこめた魔石を使うのだと言う。 ***  ***  *** 「あぁ、あちらの奥に見えて参りましたのが、  リーフ様のお住まいになる屋敷がある『紅の離宮』  でございますよ」 「は、ぁ……(えっ? リーフ様のお住まい……)  って、俺もココに住むんですか?」 ”んなの当たり前だ” と言わんばかりに 『左様でございます』とあっさり肯定された。 しかし……あちらの奥って言われても。 似たような小さなお屋敷の集まりで、 どれがどれだか分かんないよ、ゲイブ。 「それで向こうの一番高いところに見えているのが、  公爵のお住まいカーライル城で御座います」 「はぁ」 大きな門の手前でゲイブがやっと馬車を止めた。 「さて、リーフ様。ちょうどよいので、この曲輪の  ご説明をさせて頂きます。ここから見えるお屋敷で  説明させて頂きますと―― 城に近いあちらより、  『紫の離宮』、『青の離宮』その奥が『銀の離宮』、  そのお隣が『金の離宮』そして一番奥が『紅の離宮』  と呼ばれるエリアでございます」 「はぁ」 もう『はぁ』としか返事が出来ない。 とにかく、今俺が覚えられた事は自分に割り当て られた『紅の離宮』はエディの城から、 一番遠い所ってことですね? 「色の名前が付けられたエリアには、お妃候補様方が  住んでいらっしゃいます」 「はぁ」 候補様方がねぇ……。 ―― ん?! ええっ?! 「ゲ、ゲイブっ!」 「はい?」 「お、お妃候補様方って……」 「はい?」 「ひょっとして ―― いや、ひょっとしなくても、  エディ ―― じゃなくて、公爵さんの婚約者さん達  の事?」 「あぁ、そこもご存知なかったですか……現在、  お妃候補はリーフ様も合わせて5名です」 「は、ぁ……はっ!? 俺も含めて??」 お、俺いつの間にエディの婚約者に なっちゃったの~?? 俺、男なんだけど。 「デレク様、ダリル様、イヴァン様、リーフ様、  そして私、ゲイブの計5名でございます」 「はいっ?!」 ちょっと待って……今、なんて? ゲイブもお妃様候補~~?! そ、それに、デレク・ダリル・イヴァン、 揃いも揃って野朗だけじゃん!   エディはそっちの気もあるんだぁ……。 って突っ込みどころはソコじゃないっしょ。 ま、エディはそこいらの男よりずっと優しいし・ イケメンだし・超お金持ち! なんてったって 公爵サマだもの。 でもさ、なんか、こんな簡単に流されちゃって いいの~? って、気がしなくもない。 あぁ ―― まじヤバ、頭痛くなってきた……。 「―― とにかくまずは、無事編入試験を通って  頂かねばなりません」 急に入ってきた『編入』なる言葉に、 また表情が固まる。 「え……っ、編入?」 「リーフ様……先程から何度も申し上げておりますが、  公爵も在籍していらっしゃる『王立高等アカデミー』  に編入して頂きます」 「ええっ?!」 その学校の名前、ここ3日間で何度となく聞いた。 王侯貴族の子息・子女が通う お金持ちによる・お金持ちの為の、 物凄いお金持ち私立学校だとか。      「高等部では1学年より成績順のクラス編成に  なる為なんとしてでも、編入試験で良い成績を  お納めくださいますように」 「そんな……」 「リーフ様?」 今になって高校に再入学だなんて……。 一応俺も現役だけど。 通っていた学校は公立の世間じゃそこそこの レベルで、イケてる高校だって言われてて、 一夜漬け専門の俺が珍しく試験勉強頑張って 入学したのに……。うう”……。

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