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第7話 夜伽? ……何ソレ、旨いの?
5月3日。晴れ。
今日は、編入試験でした。
この日の為、本当に寝る間も惜しんで、
めちゃくちゃ勉強した。
本来の負けん気がむっくり頭をもたげ、
がむしゃらに勉強してきた。
中・高校生レベルの編入試験なんざ、
ちょろいちょろいなぁて思ってた。
何度も言うようだが、元いた世界じゃ俺は優等生。
もちろん偏差値も高かった。
高2の学期末に受けた全国模試では
国公立大Aランク・S判定を貰った。
だから、必死こいて頑張らなくても
どうにかなるさ ―― なんて思ってて。
なのに、いざ家庭教師の先生について、
勉強させられてみると物凄く、
自分の不甲斐なさを痛感させられ……。
なんだかやる気がみなぎってしまった。
王立高等アカデミーは噂に聞いた通り、
物凄く広くて大きな学校だ。
なんせ同じ敷地内に幼稚園から大学院まである。
見かけほとんどが森林&山岳地帯で人はそう多くない
ように見えたこの世界にも、
結構なお金持ちねって ”お嬢さん・お坊ちゃん”
タイプの園児・児童・生徒&学生がそこいら中に
ゴロゴロ……。
少子化が加速している日本とは大違いだ。
とにかく編入試験は無事に終わった……
と、思う。多分。
試験が終わって帰ってきて早々。
いや、ついさっきの事なんだけど。
今日も眉間に深いシワを刻んでいるゲイブに呼ばれて、
『夜伽教育』なるものが始まった。
「う” ―― うわぁ……」
王家に代々伝わる、
妙齢の男女が、その、ゲイブ曰く
『夜の営み』……をしている絵ばかりが
書いてある、いわゆる桃色草子=春画を見せられ
ながら、ゲイブが事細かくレクチャーして
くれちゃって……。(*´艸`*)
おいおい、恥ずかしがってる場合じゃないだろ。
頭の中にあのいやらしい画集『春画』の残像が、
あのギリシャ神話の彫像みたいにイケメンな
エディとゲイブの姿・顔になってグルグル回っていく。
だって、彼もお妃様候補だって言うなら当然じゃん。
けど、この見るからに寡黙で無骨そうな男の代表!
みたいなゲイブが?
エディと、あんなことやこんな事……。
うわっ、なんっつーか……凄い……。
そんなこんなで、
ほとんど食べられなかった夕食の後、
俺の部屋にやって来たゲイブが、
俺の解答を見ながらため息をついた。
何故か、すでに俺の編入試験の解答用紙が、
公爵家へ届けられていたらしい。
「はぁ~……リーフ様はブ語学が苦手とお見受け
致しました」
「あ、はい。家庭教師の先生との勉強でも、
後半、補聴器なしになるとてんでダメで……」
いや、何となくならリスニングはオッケー
なんです。
だけど、ネイティブ並みに話せ、となると
また別のハナシで……
言い訳しようと思ったら、ゲイブからのお小言は
更に続く。
「これから世界へ大きく羽ばたく王族のお妃様とも
なれば、現地語と英語は話せて当然のものです。
もちろんそれ以外にも、ドイツ語、フランス語、
イタリア語など出来ると、尚宜しいですね。
うん! これは是非とも頑張っていただかねば」
現地語以外に、
ドイツ語・フランス語・イタリア語 ~~ ??。
なんか、当分の間冬眠でもしたくなってきた。
「けれど、語学以外は……大変よく出来て
いらっしゃいますね。この短期間で本当に頑張られ
ました。クラスもSクラスで確定だそうですよ。
おめでとうございます」
ゲイブがすごく嬉しそうに、
ニッコリしてくれた。
「う”……」
「はい?」
熱くなった頬を押さえて、下を向いた。
俺がこんな風に無駄に照れてしまうのは。
さっき見せられた『春画』のせいだ!
だって、なにアレ?
この男があんなこと?
いや、問題なのはそっちじゃない。
考えたくもないけど……。
ゲイブがっていうより何より、もしかして
……俺も、エディとあんなこと?
そんなの嫌っ! ではないけど……
まだ心の準備が……。
そんなこんなで、何時、その時が来るのか?
と、ドキドキで夜もロクすぽ眠れず……
クゥ~カ クゥ~カ ―― はっ! と目覚めれば
朝になっていた。
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