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第8話 公爵閣下の御成ぁ~りぃ~
あんな風にドキドキした夜は初めてだった。
どうやら純血は守られたようだが……
微妙に肩透かしを食らったような気がして、
しばらく横になったままぼぅ~っとしていると、
ゲイブが珍しく急いだ感じで、俺の部屋に入って来た。
「リーフ様! 閣下の御成りにございます!」
「え?」
なに? それ。
「皆の者、支度を整えよ!」
「はっ!」
「え?!」
ガルシア大佐がテキパキ支持を出していく。
小間使いの双子・ニッキ-とドジャーも
せっせとお手伝い。
「おめでとうございます! リーフ様!」
「おめでとうございます!」
周りにいる側仕えの皆さんは、
めちゃくちゃ喜んでくれるけど……。
閣下の御成りってなに?
なんなの? ねぇっ、ゲイブ!!
そこで何故か?
時代劇・大奥で観た一場面が蘇る ――
『上様の、おな~りぃ~』
えっ?! もしかしたら、
閣下の御成りって、アレの事?
エディがこれから俺の部屋にやって来るって
ことまでは理解出来た。
でも、ゲイブも大佐も、
ニッキ-やドジャーまで忙しそうにバタバタ
してて、エディがここへ何をしにくるのかまで、
教えてくれない。
ってか、これが大奥の場合、
上様が正室又は側室と寝床を共にして
”夫婦の営み”ってやつをする為なんだけど。
今は、朝だよ。
それも早朝・6時。
そりゃあ、早起きは三文の徳ってゆう諺もあるけど
せっかくの試験休みの今日くらい、
ゆっくり寝かせて欲しかった。
ってゆうか、ほんと、エディは何しに来るの?
そんな事を考えながら、
皆さん忙しく動いてらっしゃるその中で
俺1人だけがヌボ~ってしてる。
そしたら側仕えの人たちが、一斉に人払いされた。
その際、女性士官のキンバリー少佐が
朝だというのに雨戸をピシャリ閉め、
窓辺にはカーテンまで引いて出て行った。
俺は? 床に正座で待つように言われて、
とにかくその場に正座する。
『リーフ様、公爵閣下の御成りでございます』
「あ……」
もしかして……でも、まさか、ね。
一旦外に出ていたゲイブが、
キャンドルの灯りだけになっているこの部屋へ、
静かに入って来た。
「……」
「?? どうなされましたか?」
「あ、あの……」
ゲイブに差し出した手が、震えてる。
「大丈夫ですよ、リーフ様」
ゲイブはギュッと手を握ってくれた。
「すべては閣下にお任せしていれば良いのです」
そう耳打ちされた。
「(じゃ、やっぱりアレ、なんですか?)」
「さぁ、ご準備は宜しいですね」
いえ! ちっとも宜しくないですっ。
そりゃあっちの経験は自分で言うのも何だが、
豊富な方だと思う。
でも ――!
ゲイブがゆっくりとドアを開けた。
・
ゴクリ ―― 生唾を呑み込む。
その奇蹟みたいに整った顔を見るのは、
4日ぶりだ。
やっぱりエディって、カッコいい。
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