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第18話 暗雲 

「―― 行ってきまぁーす」 「「いってらっしゃいませぇ」」 「「お気をつけてぇ」」 和葉はドジャー運転の送迎車で学校へ通学。 『―― 今、ドジャーの車で出て行ったガキは何だ?  見かけねぇツラだったが……』 『あ、あぁ ―― あのお方は、ですね……』 『何だよ。随分と言い難くそうだな』 『……デレク様がペラムへ行っておられる間、  公爵閣下が新たに離宮へお召になられた  候補様です』 『ほ~う、あれで男なのかぁ』 『念の為に申し上げておきますが、彼は閣下の  大のお気に入りです。  くれぐれも妙な事はお考えなさいませんよう』 『フフフ……判ってらぁな。俺でも命は惜しいからな。  じゃ、ちょっくらお兄様に挨拶してくる』 『はい、なるべくお早いお戻りを』 その男は車から降りるとランカスター城の正面玄関へ 向かった。 ***  ***  *** 応接室では不穏な空気が流れる。 口火を切ったのはエディからだった。 「こんな時間に何の用だ?」 「そんなに嫌そうな顔しなくても……お義兄様」 派手な身なりのこの男はデレク・ランカスター。 先代当主・アドルフ(タルボット公)の第二夫人・ カサンドラの1人息子だ。 エディにとっては異母弟になる。   「仕事に差し支える……というかすでに差し支えてる。  要件を手短に話せ」 デレクはタバコをフゥーっとふかすと話し始めた。 「では手短に。少しばかり金を用立てては 貰えませんか」 「用途は?」 「仕事で使う ―― とでも言っておきましょうか?」 「だめだ」 「なぜ?」 「お前、ヤバい事に首突っ込んでいるな?   調べはついてる」 「なんの事かさっぱり……」 「中途半端に半グレ共をタラし込んで  何を企んでいる?」 エディはギロッとデレクを睨みつけた。 「さすがお義兄さん。どこまでも知ってる」 「ガキ共とは今すぐ手を切れ。半端な連中ほどヤバい  もんはない。お前の為だ、デレク」 『いちいち兄貴面して俺に指図するなっ!』と、 デレクはテーブルを拳でダンッと叩いた。 そしてギリギリ……っと歯ぎしりをする。 「とにかくだめだ。話はこれだけか?   なら俺は行く」 「おや……お話はもうお済みですか?」 ドジャーがお茶を運んできた。 「あぁ、俺は会社へ向かう。  こいつには適当にさせて帰してくれ」 そう言うとエディは室を後にした。 「行ってらっしゃいませ」 【くそっ エディの野郎!】 デレクはテーブルを蹴飛ばすと立ち上がった。 「おやまぁ、お行儀が悪いですよ?   デレク様もうお帰りですか?   お久しぶりですのにもう少しごゆっくりなさって  下さいまし」 【どいつもこいつもバカにしやがって】 「……また来る」  ***  ***  *** 車の中でエディは足を組みハァ……と溜息をつく。 「どうかされましたか?   デレク様が来ておられたようですが……」 ゲイブだ。 「あぁ……ちょっとな」 「……実は彼の事で良からぬ噂を耳にしましたが」 「お前の耳にも入っているのか」 「はい。デレク様が手を組んでいる連中は、  裏で武器の密造や禁止薬物の密売へも手を染めています。  もしそれに彼が関わっているとなると……」 「親父のメンツの為にもそんな事はやめさせる。必ず」 【それに万が一、親父の耳に入れば、  半グレどもはおろかヤツも無事ではおられまい。  義理とは言えど、弟の不始末は兄の不始末。  この俺もなんらかの責任を取らねばなるまい】

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