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第21話 オータムパーティー
「―― ずは……かずは ―― 和葉っ!」
和葉はハッ! として、隣を歩くジャンニーニ・
略して”ジャン”を見上げた。
「な、なに?」
「やっぱりさっきから変だぞ。
6時限目の後で何かあったのか?」
「ううん、何もないって言ったじゃん ――
あ、あのお店じゃない?
レストランテ《ボーノ》って看板出てる」
「あ、あぁ……」
これから2人は、毎年の秋恒例のオータムパーティーに
参加する。
その席には、エディのようOB達も出席予定だ。
ブブブ……メールの着信
【クラウス・ウォートン】
この世界でもスマホ・携帯・インターネットは
若者の必須アイテムだ。
初めての販売から僅か2年足らずで、末端の平民にまで
ほぼ100%普及している。
クラウス・ウォートンは和葉らの3コ先輩で、
それまでなかなか認可されなかった”軽音楽部”を
正規の部活として理事達に認めさせた功労者でも
ある。
あ、ウォートン先輩も今年は来たんだぁ。
受信メールを開くと ――、
”和葉ちゃん達はまだですか?
席……なくなりそうなんだけど ”
……え
だって、まだ30分も前
「ね、ジャン ――
早くしないと席なくなっちゃうって、
クラウス先輩が」
「あの人は何にしてもせっかちだからな」
こんなに皆……張り切って来るなんて
思わなかった
カラン カラン カラーン ――
「遅くなり……」
「わあっ!! 和葉。ジャンニーニ! 」
「待ってたんだよっ――!!」
何だろう?
この異様な盛り上がり……気後れしそう。
「さぁさぁ、お2人さんはこちらへどうぞぉ~、
和葉はこっち、ジャンはこっちねー」
やっぱりこういう賑やかな席を仕切っていたのは、
宴会命・飲み会大好き人間のアルだった。
このやたら盛り上がった状態に流されて
ジャンと2人、促されるまま席に座らせられた。
*** *** ***
レストランに集まった気心の知れた面々に。
所々から笑い声や騒ぎ声が聞こえる。
皆、お酒も進んで程よく落ち着きを取り戻した頃――、
今まで私の隣にいた女子が男子と入れ替わった。
「……お久しぶり和葉」
「―― うん、久しぶりだねクラウス先輩。
さっきはメールありがとう」
ほっこり笑う彼・クラウスは、
お父さんの不慮の事故死というアクシデントさえ
なければ一番仲の良かった先輩。
そして、いよいよ実家へ帰るといった数時間前、
町外れのカフェへ呼び出されて ――。
==== ====
『お、俺と、け、結婚を前提として
付き合って下さいっ』
==== ====
告白された。
16年間の長い人生に於いて初めての告白は、
返事に迷っている余裕なんかない、性急なものだった。
とにかく彼は急いでいた ―― なんでも、
実家へ帰ればすぐに許嫁と婚約させられそうだから、
って。
そりゃあ彼だって、散々悩んだのかもしれないけど、
自分が家業を継ぐ為実家へ帰るって間際に
言わなくてもいいじゃん。
結局和葉はクラウスのとても不安そうに揺らぐ瞳を
チラチラと見ながら、か細い声で
「――ごめんなさい」って、
言うのがやっとだった。
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