15 / 40
第15話
ぼんやりとカクテルを眺める洸樹の肩に、ぽん、と手の平が置かれた。
「お待たせ」
クスリと笑った隼人と時計を見比べて、
「1時間くらい早くないか?」
尋ねると、耳元に唇を寄せて囁いた。
「マスターがサービスしてくれたんだ」
カウンター内をみれば「お疲れ様ー」と手をふるマスターがいた。
「お疲れ様です。また明日」
「うん、ゆっくりでいいよ」
大学あるしねぇ。と微笑んで隼人と洸樹を送り出した。
店の外に出ると、初めてふたりきりになって。
「さて、と……どこでなにを食べる?」
挑発的に笑う隼人から目を逸らす。
「場所は、お前の家しかないな。俺の家は調理器具無いし。料理はまかせるよ」
「きみがBARでは出せないメニュー、って曖昧に頼んだのに、また全部おまかせだと迷うなぁ」
「じゃあ……和食。米とおかずと味噌汁」
「かしこまりました。じゃあ先に、スーパーに寄るね」
自宅に向かう道中のある24時間スーパーへ立ち寄る。
品質がよく、価格もやさしい。
「……和食……ねぇ」
ついでに数日分の食料を買い込もうと思いながら青果コーナーを回る。
「……茄子と小松菜、葱……。味噌汁の具はなにがいい?」
「豚汁! 具沢山のやつで、豆腐は木綿豆腐」
そう言いながら、トマトをカゴに入れた。
「あとは、トマト苦手な俺にも美味いトマトメニュー作って」
「注文が細かくなってきたね」
苦笑しつつも、隼人はカゴに入れたトマトと棚の中のトマトを見比べ、「こっちの方が良いな」なんて入れ替える。
どこかよそよそしさが無くなってきた。
「豚汁ね。じゃあ大根はあるから、人参とごぼうと、肉買って……」
トマトはどう料理するかと頭を悩ませる。白だしで煮浸しにするか……。
「……メインは、どうする?」
豚肉を見ながら洸樹に声をかけた。
ともだちにシェアしよう!