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第18話

「いただきます」 両手を合わせて挨拶して食事をはじめた。 「……食事の挨拶なんて、久しぶりにきいた」 きょとんとした隼人がうーん、と唸った。 「ふつうでしょ?」 「人と一緒に飯食うのが久しぶりなんだよ」 豚汁をふうふう冷まし、一口すする。 「ひとりのときでも挨拶はするもんだよ」 隼人も豚汁を口にする。こいつは猫舌ではないんだな。 「お前はさ、俺とふたりで飯食ってて、怒られないの?」 そんな質問に、またきょとんとして。 「誰から?」 そんな質問で答えを返すが、何も言わない俺の顔を隼人は見つめる。 「……なーんて、分かってるけどね……俺に恋人は居ないよ」 「……へぇ……」 なんとも言えない気持ちがそのまま声に出た気がした。 「ついでに、俊さん以外だと洸樹さんがこの家に入ったのは初めてだし、俺が料理を仕事以外で振る舞うのも初めて」 満足?と微笑む。 「まぁ、いきなり筋肉オトコが出てきて『オレの隼人に手ぇ出すな!』とかブン殴られる心配はなくなったな」 鶏肉のソテーを頬張ると、隼人は「美人局(つつもたせ)?」と笑って。 「安心したなら……手ぇ出すの?」 紅い唇にお猪口を持っていく。 一口でお猪口を空にして、酒に濡れた唇を舐めた。 薫りたつような色気。 「……どうだろうな」 色気に呑まれないように笑んだ。 「……それはまたあとでにして、トマト食えよ」 約束だからな。と煮浸しのトマトを盛った皿を洸樹の前に置いた。 「……ぅ……」 「不味かったら俺が食うからいいぜ」 おろした生姜がのったトマト。湯剥きされたそれとにらみ合う。 ばくっとトマトを口に入れて、ごくりと飲み込んだ。 「どうだ? 美味いか?」 「……不味くは、ない」 日本酒を傾けると、「ガキだなぁ」と苦笑して。隼人は俺の口元を、そっと指で拭う。 「なーんか、色々くっ付いてるぞ」 目と目が合った。ここまでされたら、やるしかないか? 「……ふ、緊張してるな?セックスもキスも食べるのと一緒だ。自然な流れと、勢いだろう」 クスクスと笑いながら拭った指を舐めた。

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