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第26話
「日本酒とビールとペリエならあるよ」
目もとが赤くなった微笑みを真正面から見た。
「サンキュ、やっぱビールかなぁ」
漆黒の瞳を見つめながら、さっきまでのふたりの行為で熱が籠もった寝室を出た。
「シャワーだけでいいならすぐはいれるよ。湯船はお湯ためるから時間かかるけど、どーする?」
風呂場の電気をつけながら洸樹に聞いた。
「風呂も入るよ〜」
のんびり答えると「はいはい」と笑う隼人の声が聞こえた。
仕事終わりに食材を買い物させて、手料理を食い、性欲も満たして、風呂も沸かしてもらうなんて、俺はなんて図々しい男なんだ。
だが、図々しいままでいたかった。そっちの方が、下手に真面目になるより、この先も隼人の傍に居る事が出来そうで。
仕方ない。と笑いながらバスタブにお湯を溜める。
今まで付き合ってきた、関係をもったことのある男とは違う洸樹に肩の力が抜ける。
「とりあえず、ホットタオルで身体ふけよ」
シャワーで濡らし、絞ったタオルを洸樹に渡した。
「サンキュー。そういや、何度目だろうな、こうやってタオル渡してもらうの」
初めて会ったときの思い出し笑いをすると。
「あのときは雨での濡れ鼠だったけど、いまは暴れて汗掻いた大型犬?」
隼人もクスクス笑うから。
「お前も汗でべとべとになってんじゃん……一緒に風呂入る?」
「……もう体力ないからなぁ。それに、明日もバイトだろ?ちゃんと寝ようぜ」
自分もホットタオルで身体をふきながら洸樹の頭を撫でた。
「別にやんなくてもいーよ。ふたりで風呂入るだけでさ」
頭を撫でる隼人の唇を指先で弄る。
「ふふっ……信用できねー」
そんな会話を交わしていると、どうやら風呂が沸いたらしく。諦めた感じで、俺はひとりで風呂に入った。
なんとか風呂にはいった洸樹が出る前に簡単に腹に入れれるものを作るか。とキッチンへ立つ。
「……うどん食べたいな」
うどんにしよう。
「はぁ〜あ、どーしよーかなぁ」
シャワーを浴びながら、洸樹は大きな溜息と独り言を口から出す。
隼人と今夜だけの関係にはなりたくない。
じゃあ、風呂上がりに口説くか?
「今更、だよなぁ〜」
独り笑いをすると、バシャバシャと頭から顔、身体全体のぬめりを洗い流して。
「大体、あいつはどう思ってんだ?」
風呂にゆったりと浸かりながら呟いた。
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