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第30話

かわいい。男らしい体格なのに、どこか子供っぽさが抜けない洸樹は庇護欲がくすぐられる感覚がある。 「それはどーも」 クスクス笑いながら、隼人の耳元に口付ける。 「でも俺は、どうせちょっと可愛がられただけで、すぐ飽きられたんだよ」 笑いながら拗ねると、隼人の手が伸びてきた。 「なんでそんな事言うのさ?」 顎から頬を撫でられて、慰められる。 「洸樹はかわいいし、格好いいと思うけど?」 俺にはない魅力だね。と微笑む。 「あぁ……お前みたいに恋愛をあっさり楽しめるタイプなら、俺もフラれなかったかもなぁ」 猫のように撫でられながら、しみじみと語る。 「向こうも、元々ゲイじゃない俺が、あんなに嵌るとは思ってなかっただろうし」 隼人は振り向くと、洸樹の肩に腕を乗せて。 「なんだよ洸樹、ストーカーにでもなったの?」 目と目を合わせて問い掛ける。 「いや、結婚するからもう会えない、って言われてさ」 洸樹の言葉に隼人は少し苦笑いした。 「……初恋で、それは……つらいね」 「その人と会う前に、オンナと恋愛したこともあったんだぜ?」 苦笑に苦笑を重ねると。向き合う小さな唇に、軽くキスをした。 「じゃあ、洸樹はゲイではないんじゃない? いいの? 俺と……こんな事してても」 今までの男とは少し違う相手。きっと洸樹の方がはまりこむのは早いだろう。と思う。 問い掛ける唇に、今度は強引にキスをして。しばらく舌で隼人の唇を味わうと。 「良いも悪いも……やりたいんだから仕方ないだろ」 今度は首元に舌を這わせる。 「ん……ふふ。洸樹は、ひとつにまっすぐ進むんだね」 俺とは違って。と笑う。 隼人が笑うと肌に吐息を感じて。また内側に熱が生まれる。 「隼人もさぁ……本当に良いのかよ? 俺と、こんな事しても」 首元から胸に舌を移動すると、笑いの吐息は違う雰囲気になるが。 やっぱり隼人にとっても、俺は可愛いだけのぬいぐるみか? そんな風に思うのも仕方ないのか。 「うーん。楽しいからね……洸樹といるの」 くしゃりと洸樹の髪をかき混ぜながら頭を撫でる。 「それに……」 続く言葉は出てこなかった。 「それに何だよ?」と話を促す一言も言えなかった。 黙り込んだふたりを誤魔化すように、両手で隼人の身体をあちこち探る。 「……あっ、やぁ……」 吐息が声に変わって。洸樹の熱も温度を増していく。 熱があがるのと同時に腹に重いものがわだかまる。 「……ねぇ、洸樹。ここを引っ越そうと思うんだ」 昔から、恋人には事欠かなかった。 愛情のある人。社会的地位を持っている人だから結婚するときが別れる時で、それが普通だと思っていた。 だから、洸樹の気持ちに寄り添いきれない。きっと俺は薄情なのだろう。

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