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第34話
なにがいいかなぁ、と考えながら笑う。
「白身魚のフリッター食べたいんだよね。さくふわの白身魚。でも洸樹のはあっさりしすぎかな……」
うーん、と悩む隼人の表情が一瞬強ばった。
どうかしたのか? 腕を掴む力をぎゅっと強くして。
洸樹は隼人の表情を覗きこんだ。
「……はやくいこ……」
とりつくろった笑顔で隼人はスーパーに寄り、遠回りをして自宅へ洸樹と共に帰った。
「先に……シャワー浴びててもいいよ」
自宅に入ってからも、隼人はどこかソワソワしていたが。
「じゃあ、お言葉に甘えまーす」
その態度に突っ込む事も出来ず、洸樹は軽い返事で風呂場へと向かった。
風呂場へと向かった洸樹を見送り、鳥肌のたった腕をさすりながら深呼吸する。
冷えた体温が上がらない。
久しぶりに顔を見た。遠かったが、見間違えないあの人の顔。
「……ぅあー、変だったかな……変だったよな……」
なにも関係のない洸樹を巻き込むのは嫌だな。と思いながら買ってきた食材を調理し始めた。
頭上から冷たいシャワーを身体全体に浴びせて。
洸樹は頭を冷やしながら、身体の理性も取り戻す。
「今日も、隼人と、やるんだよなぁ……」
口の中で呟くと、身体の欲望が反応するが。大きく頭を横に振って、一旦性欲を収める。
聞いた方がいいのか、聞かない方がいいのか。
どっちをとっても隼人は答えるのかわからない。
ギクシャク考える前に、とりあえず食欲を満たそう。
風呂から上がってリビングへ向かうと、またいい匂いが漂っていた。
「あー、腹減った。なに作ってくれたの?」
台所から皿を持ってきた隼人に尋ねる。
「……イカと里芋煮物と、イカの刺身と豚のしょうが焼き。味噌汁は小松菜とお麩だよ」
里芋は前に貰ったのを下茹でして冷凍庫に入れてあった為味が染みやすい。イカは今日馴染み客に捕れたてを貰った。
「やったぁ! 俺、イカ大好き!」
子どものようにはしゃぐ洸樹に、隼人も微笑んだ。
「それはよかった。飲み物はビールでいい?」
力強く頷くと、冷蔵庫へ向かった隼人の後ろ姿を見て。
やっぱり何も無かったのか? 考え過ぎか? 聞こうか聞くまいか悩みながら、洸樹は箸を手にした。
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