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第36話

「大丈夫、って……どういう意味だ?」 恐る恐る語る隼人につられて、洸樹の口調にも不安が混ざる。 「…………」 また隼人は口を閉ざした。こいつ、まさか……。 「誰かと一緒に居ないと、怖いのか?」 洸樹みたいな存在でも? だから合鍵を渡したのか? 「……違う、わけじゃないけど。鍵を渡したのも、家にあげたのも、洸樹がはじめてだ」 人肌が欲しい日もある。恋人だけじゃない関係だってある。 「……信じなくていい。でも、洸樹は俺を無闇に傷つけないって、思ったんだ……」 隼人は静かな、儚い笑みで洸樹を見つめた。フラッシュバックするストーカー(元カレ)の行為は未だに言葉にはできない。 じっと見つめ合い。洸樹は隼人をそっと抱き寄せた。 その華奢で脆い身体を抱く力を、段々と強くしていく。 なにも言う事は出来なかった。ただ触れたくて。ただ離したくなくて。 冷たくなった身体に洸樹の体温がじんわりと染み込む。 「……ごめんね」 こんな俺で。と洸樹の腕に身を預けた。 なんで謝る? だが尋ねはしなかった。 隼人の首筋の薄く透明な肌に唇を当てて、洸樹はその手の平で背中を摩る。 そのまま唇を首筋から頬に、そして口元に移動して。冷えた唇を舐めて熱を与えた。 「……ん……ぅ……」 与えられる熱にほっとする。 人の体温で安心するのは久しぶりかもしれない。 いつもどこか「不安」が付きまとっていたから。 こいつをもっと暖めたい。俺から湧き出る熱で。 洸樹はそう願い、隼人の白く冷たい肌に掌や唇を当てる。 「なぁ……隼人と一緒に、寝たいんだけど……」 耳元に口付けて、願望を囁いた。

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