36 / 40
第36話
「大丈夫、って……どういう意味だ?」
恐る恐る語る隼人につられて、洸樹の口調にも不安が混ざる。
「…………」
また隼人は口を閉ざした。こいつ、まさか……。
「誰かと一緒に居ないと、怖いのか?」
洸樹みたいな存在でも? だから合鍵を渡したのか?
「……違う、わけじゃないけど。鍵を渡したのも、家にあげたのも、洸樹がはじめてだ」
人肌が欲しい日もある。恋人だけじゃない関係だってある。
「……信じなくていい。でも、洸樹は俺を無闇に傷つけないって、思ったんだ……」
隼人は静かな、儚い笑みで洸樹を見つめた。フラッシュバックするストーカー(元カレ)の行為は未だに言葉にはできない。
じっと見つめ合い。洸樹は隼人をそっと抱き寄せた。
その華奢で脆い身体を抱く力を、段々と強くしていく。
なにも言う事は出来なかった。ただ触れたくて。ただ離したくなくて。
冷たくなった身体に洸樹の体温がじんわりと染み込む。
「……ごめんね」
こんな俺で。と洸樹の腕に身を預けた。
なんで謝る? だが尋ねはしなかった。
隼人の首筋の薄く透明な肌に唇を当てて、洸樹はその手の平で背中を摩る。
そのまま唇を首筋から頬に、そして口元に移動して。冷えた唇を舐めて熱を与えた。
「……ん……ぅ……」
与えられる熱にほっとする。
人の体温で安心するのは久しぶりかもしれない。
いつもどこか「不安」が付きまとっていたから。
こいつをもっと暖めたい。俺から湧き出る熱で。
洸樹はそう願い、隼人の白く冷たい肌に掌や唇を当てる。
「なぁ……隼人と一緒に、寝たいんだけど……」
耳元に口付けて、願望を囁いた。
ともだちにシェアしよう!