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第38話

朝の匂いに惹かれて目が覚めた。 「……、…………」 目の前にいる、洸樹に心があたたかくなる。 「……ごはん、じゅんびしなきゃ……」 久しぶりに熟睡して寝起きもいい。 好物でも作ろうかと考えながら、洸樹の胸にすりよった。 どこかくすぐったい夢を見て、うっすらあけた瞼から差し込む朝日が眩しい。 「……ん〜、なんだよ……」 もぞもぞと辺りを探るが、昨夜からずっと抱いていた隼人の身体は無い。 また目を閉じて、ごろん、と寝返りをうつと、何処からか美味そうな香りが流れてきた。 昨日のイカの煮物を温め直し、お味噌汁とごはん、卵焼きをつくる。 「……これでいいかな……」 あとなにか食べるかな……。と考えながらそろそろ洸樹を起こそうかと思いふり返った。 「おはよー、隼人」 寝癖の髪をいじりながら、こっちを向いた隼人に笑いかけた。 「……おはよう、洸樹」 隼人も微笑む。 「わぁ、美味そうだな〜。朝からありがとう」 洸樹は朝ごはんを見てはしゃぐ。 「ふふ、昨日は甘えちゃったから。ありがとう、洸樹」 柔らかく微笑む隼人は今までの他人を拒絶するようななにかが消えていた。 「甘えられたり甘えたり、それがいいんだろ」 よく分からない返事を投げて、ぱくっと卵焼きをつまみ食いする。 机に皿を並べる隼人の細い身体を見て。 「なぁ、隼人」 洸樹は思わず口を開いた。 「これからふたりで暮らさないか?」 「…………洸樹のバイト先と大学、ここから近いんだったら俺は構わないよ?」 思った以上にあっさりとした答えだった。 ふと、洸樹は不安になった。 軽い気持ちで言った訳ではないが。 一分一秒でも隼人と一緒に居たいのは本当だし。 でも、俺一人で隼人のことを守れるか? そして隼人は、俺のことをどう見ているのか? 「なぁ、隼人」 ぐるぐる回る想いから、洸樹は口を開いた。 「俺は、ごはん目当てで暮らしたい訳じゃないからな?」

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