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Ⅰ章 優しいその指が……④

「ご指名がお決まりでなければ、私がお相手いたしますよ?」 「お前が……」 「そう」 口の端に他愛もない笑みを刻んだ。 「貴方は『鷹緒』をお探しなのでしょう。私が鷹緒です。 つまり、貴方は私を買いに来たという事でしょう?」 「ふざけるなッ」 「ふざけてなどおりません。 私は当館のコンシェルジュで春を(ひさぎ)ませんが、遥々私を訪ねてくださったお客様に満足して頂けますよう誠心誠意尽くす……と申し上げているのです」 嘲笑に彩られた玲瓏が、容赦ない針を突き刺す。 「平民では華族様のお相手は務まりませんでしょう?」 琥珀の双眼が蠢いた。 「私『鷹緒』をお訪ねでしたら、爵位をお持ちだと思いましたが違っておりましたか?」 食わせ者がッ! 鷹緒さんは伯爵家ご子息。 鷹緒さんを訪ねるのは華族を名乗るも同然だ。 気づいて…… わざわざ嫌味を。 貴様こそ伯爵令息を騙る贋作(ニセモノ)ッ 「平民。俺は子爵 斉原(サイバラ) (シノグ)だ。藤野伯爵ご令息 鷹緒様に取り次ぎ願おう」 大理石のテーブルにボロボロの革の手帳を置いた。 「父の形見だ。お前が本物の鷹緒さんなら、この意味が分かるだろう」

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