14 / 25
Ⅱ章 時こそ今は花は香炉に打薫じ②
鷹緒の親になろう思った。
彼の両親は藤野家の使用人で、空襲で亡くなった。
一人残された彼を育てるのは藤野の務めだと思った。
藤野の名跡は俺にある。
義理の父である当主が病で急逝し、嗣子は俺以外にいない。
俺には藤野の借財だけが残った。
年はさほど離れていないが、彼が俺を父と慕ってくれたのは嬉しかった。
『鷹緒』
彼の新しい名は、俺の名前を名づけたんだ。
俺じゃない『藤野 鷹緒』
幸せになってほしい。
俺の代わりに……
そう願って……
借金は全て俺が引き受けた。
生前、当主が事業で失敗し、膨大な借金で首が回らなくなって……
借金のカタに俺は売られる事になった。
憐れに思い、俺を買ってくださったのが
斉原 満忠 様
凌の父上
「俺は、兄に……」
凌の兄に……
なってしまった。
「戸籍も入っている」
真珠を名乗る俺の本当の名は
『斉原 鷹緒』
「俺達は兄弟に……」
なったんだ……
ともだちにシェアしよう!