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Ⅱ章 時こそ今は花は香炉に打薫じ④
ガシャンッ
割れた硝子の悲鳴が轟く。
飛散した琥珀のラム酒が床を濡らす。
嗚咽の色すら、むせ返る芳香が塗り潰す。
ぽたり
破片で指が切れたのか。
鮮血が滴っている。
叩き割ったグラスがもう、形を留めないように
壊れたグラスから、ラム酒が落ちていくように
ギラギラと傷つけるカケラだけが散らばっている。
ギラギラと
手を伸ばせば傷つける。
心に突き立てる透明な刃の跡だけが残った。
部屋 の中
「俺の居場所は何処にあるんだッ!」
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