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Ⅱ章 時こそ今は花は香炉に打薫じ⑦

「けれど貴方はッ」 いなくなる。 「出てくんだろうッ」 「鷹緒と一緒にいる」 「信じられるか!貴方は、その男を愛している」 「愛していてもッ」 …………一緒になれない。 「俺は男娼だ」 終わったんだ 「交わった瞬間」 俺達は……… 「終わる恋だったんだ」 叶わぬ恋だから 一夜の夢として、この胸に秘める…… 永遠に…… 現実に結ばれる事はなくとも、この恋は未来永劫醒めない夢に囚われるから寂しくない 哀しくない もしも哀しくなった時は、一夜の夢を想ひ出して、心を恋の夢に沈めればいい…… 夢の鎖で心を縛ろう…… 「嫌ですよ」 頬を包んだ温かな手 「俺から逃げないでください」 いつの間にか、伝った雫を…… 「何度でも、あなたの涙を拭います」 指が撫でた。 「人を好きになる事は、罪じゃありません」 ヴァドォォオーンッ! 館が激震し、焦げ臭い煙が侵入したのは、その時だった。

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