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Ⅱ章 時こそ今は花は香炉に打薫じ⑨
蝉が啼いている。
焦げ臭い煙が黄昏の空に昇る。
鎮火された屋敷は、宵の帳に黒い骨組みだけを遺 していた。
脱け殻の屋敷に響く残滓の音色が、蝉の声ようだ。
ジィジィと冷たい夏に蝉が啼いている。
「警察の実況見聞に行ってきます」
本来ならば俺が出向くべきところを、藤野を継いだ鷹緒が申し出てくれた。
「……勘違いするな」
俺には声の届かない場所で、鷹緒と凌がすれ違う。
「『俺の物だ』とお前が断言した時に、気づいていたんだよ」
だから、この時計を父様に触れさせたくなかった。
「いつか、お前から父様を奪う」
すれ違い様
手渡された破片が、再び運命を廻す
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