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五時過ぎの校舎。 部活生以外の生徒は殆ど帰宅していて、初めて訪れた学校を右行ったり左行ったり、ウロウロしていたら。 女子のあまぁい香りをまだ堪能もしていない段階で背中になんかおっかねー声が。 「スカート短けぇし、それ、その髪の色、お前学校なめてんのか」 無視するわけにもいかなくてビクビク振り返ってみたら。 視線の先には一目で体育担当だってわかる背ぇ高い教師が立っていた。 ださくない、上下かっけージャージ、喉元までジッパー上げて、短すぎない適度な黒短髪。 二十代後半くらいだろーか。 あーハイハイ、男前でいらっしゃいますね……。 正に俺が憧れとしている理想のルックスであられますね……。 俺の前で黒ケースから一番ハードな清涼剤タブレットをボリボリ食べていたかと思えば、いきなり、がしっと腕を掴まれた。 「……、ちょっとこっち来い」 やばい! やばすぎる! 逃げなきゃ! そう思っても体はすっかり強張ってしまって。 遠慮ない体育教師に力任せに引っ張られて。 「面接室」ってプレートが下がった、まるで刑事ドラマに出てきそうな取調室じみた場所に、あっという間に引き擦り込まれてしまった。 「学年、クラス、名前言え、こら」 テーブルを挟んで向かい側のパイプ椅子に踏ん反り返った体育教師がおらおら口調で聞いてくる。 なにこいつ、ほんとに教師? 怖いんですけどー!! 「に、二年……」 「二年の、何クラスだ」 「D……あ、ちが……っに、二組、です」 「二年二組、で、名前は」 「えーっと……さ、佐藤(偽名)です」 「へえ、二年二組の佐藤、か」 体育教師は片頬杖を突いて、必死に俯いていた俺を覗き込むように上体を低めにすると、言った。 「俺は二年二組の担任だがお前の顔した佐藤なんて生徒は知らねぇな」 さぁーーーーーー。 俺は初めて血の気が引く音ってやつを聞いた。 やばいやばいやばい、どうしよーーーー!!!! 「お前、この学校の生徒じゃねぇだろ」 「……ぅはぁい……」 「誰かのお下がりか、ダチの制服借りて、ゲームでもやってんのか」 「……はぁい……」 「お前、やたら声低いな」 「う゛っほぉっ、っごほお゛っ、かっ、風邪気味で……!」 またパイプイスの背もたれに踏ん反り返った体育教師。 次の瞬間。 「ッ……ひゃあ!?」 いきなり立ち上がり、イスに座っていた俺の首根っこを掴むなり、どえらい強引ぶりで立ち上がらせた。 がったーん、二台のパイプイスが床にほぼ同時に倒れる。 殴られる!! だけど咄嗟に目を瞑った俺の元へやってきたのは平手打ちでもグーパンチでもなかった。 「ふっ、ふむぅっ?」

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