「また遅刻しやがって、お前ケンカ売ってんのか」 「すすすっすみませぇん！」 ヒールをかっつんかっつん言わせて走ってきた俺、いつにもまして仏頂面の超怖ぇ緒方にへこへこ謝った。 まぁ慣れたけど。 本当はそんな怒ってないって知ってんだけど。 あれだよ、あれ、習性ってやつ？　条件反射で謝っちゃうみたいな？ 情けなくてウケるよね！ 「ノロマ、さっさと乗れ」 おらおら緒方の愛車が実はしゃれおつワーゲンっていうのもウケるよね！ そう、今日は緒方とドライブデートの日。 うん、断言します、これってやっぱどう考えてもデート、しかも行き先水族館だし。 ラッコの餌やり見ちゃったし。 イルカのショーまで鑑賞しちゃったし。 「それ、また買ったのか」 「うん！　ネットでついカートに入れちゃった！」 上はぴたっとしたシンプルなカットソー、下はミニのふわふわバルーンスカートにアーガイル柄のニーソ。 太腿好きの緒方のために絶対領域は毎回欠かさない。 貯金は底尽きそうだけど楽しいから気にならない。 コンビニのバイトでもしてぜーんぶ服につぎ込んじゃおーかな。 「似合うかな？」 ミリタリージャケットが似合いすぎる緒方は人気のない水槽前でわざわざ足を止めてギザギザ歯が鋭そうなウツボを眺めている。 俺の質問は無視かよ、あーそー、俺よりウツボの方に興味大ですか。 でもちゃーんとおにゅーって気づいてくれたし、ま、いっか！