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時間がなかった理由、それはチョコ作ってたから。 そう。 今日はバレンタインデー。 あんま綺麗なカタチじゃないし、失笑もんだけど、まーせっかくのイベントだし。 女子じゃねーけど、男だけど、緒方にあげたいって思って。 ……あはははははは!! もう笑うしかない!! あはははははははは!!!! 「緒方さん、甘いもの、嫌い?」 まぁるいベッドの上。 向かい合って座った緒方に俺は手作りチョコをおっかなびっくり渡す。 受け取った緒方は、ネットを参考にして見よう見まねで工夫したラッピングをスムーズに解いて、正方形の箱の蓋をぱかっと開いた。 中には失笑もんの不細工ハート型がごろごろ。 改めて見ても、やっぱ、失笑する。 「えっ」 いきなり緒方に箱ごと突っ返されて俺は凍りついた。 どうしよーーーーー泣きそーーーーーーです!!!! 「食わせろ」 すでに涙目になっちゃった俺、ぱちぱち瞬きして緒方を見つめた。 緒方のテンションがあんまりにも平行線っていうか、心電図だったらもう死んでんじゃね? っていうくらいにブレがないから、この人何考えてんの? ってまだ不安ではあったけど。 返品されたわけじゃないってわかって、気を取り直して、ハートを一つ手にとった。 あ、俺、震えてる。 もうやだ、チョコなんかつくんなきゃよかった、やっぱちゃんと女装すりゃあよかった、素で来るんじゃなかった……。 「ノロマ、遅ぇよ」 「あっ」 ぱくんっ 緒方は俺の手首を掴んで引き寄せると指先から直接ハートを食べた。 ビターの板チョコが元になったほろ苦いカカオ。 俺の手首掴んだまま、噛み砕いて、飲み込んで。 「あっ」 次に俺の指をべろりと舐め上げてきた。 「こっちの方が甘いな」 「お、緒方さぁん……」 「まぁ、うまかったぞ、コーイチ」 ほんとの名前呼ばれただけで、俺、感じちゃった。 ちゅーされたら、チョコの味がして、一気にえろい気分になって。 ビターの残り香に夢中になった。 緒方、まじ、大好き。

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