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さーて、今日は土曜日。
今夜の獲物を選びに街やってきました。
逆ナンするわけだから、女装勝負服ですけど、キメキメですけど、何か?
なーんて街角広場のベンチに座って物色していたら。
二人組に声かけられた。
ナンパだ。
まー時々ある、そのまま便乗? して? 車の中とかクラブの隅っこ暗がりで、がぶちゅーすることもしばしば。
でも、まーまーイケメンだけど、どっちの血もまずそ、体に悪いモンがいーっぱい溜まってる、むり、いらねー、却下。
そもそも二人組って時点でアウトなんだよなー。
「待ち合わせです」
そう言って断ったけどなかなか引き下がらない、あーもー、めんどくさ、獲物選びに集中できねー!
うわ、しかも腕掴まれて立たされた、こいつら強引スギ、性格ワル、まじふざけんな、なんなら出血死させよーか?
まーそんな野蛮行為、俺、しませんけど。
「待ち合わせだってば、もー、しつこいって……!」
そう言ったら、調子乗るなって、笑われながら突き飛ばされた。
このくそやろー、やっぱ出血死決定。
そう心に決めた俺はヒール高めのブーツのせいで、バランスがとれずに、そのまま真後ろへ……。
「ふぇ?」
俺、抱き止められた。
誰かの胸にぼふって背中が着地したかと思えば、大きな両手で支えられて、ちゃんとまっすぐ立つよう修正された。
振り返ったら。
うわ、なにこの人、かっこいー。
ていうか、かっこいー。
あれあれ、かっこいー。
「瞳孔そんなに開かせて通行人に暴行、か、十分通報の理由になるな」
その人のそんな言葉に二人組は慌てて人波に紛れてその場から消えてった、ばーか、自分で寿命縮めやがってばーかばーか、ば……。
どきどきどきどき
あれあれ、なにこの音、どっから聞こえんの?
俺のなかから、してんの?
「大丈夫か」
俺よりヨユーで背の高いその人に顔を覗き込まれて、なんかすげーびっくりしちゃって。
視線、逸らした。
火傷したみたいに頬が熱い。
顔だけじゃない、全身、なんか熱い。
クラクラする。
「ケガ、してない、です」
「そうか」
黒短髪で、目元にちょっと前髪がかかってて、鋭い眼差しで。
Vネックのシャツで首筋丸見え。
俺の喉が反射的にごくりと鳴る。
「す、みませ、ん……ありがと、です」
「別に」
どうしよ、俺、この人がいい。
この人、ほしい。
すっげーほしい、ほしくてたまんない、今すぐほしい。
あれ。
いつもみたいに誘えない。
いきなり喉が乾いてうまく声が出せない。
ていうか、あれあれ、俺、どうやって逆ナンしてたっけ?
やば、自分の記憶が飛んでる。
どうしよ、どうしよ。
「あ」
その人が回れ右して人波に紛れてしまいそうになって。
ぱにくった俺は。
その人の背中に思いっっっきり抱きついた。
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