「あれー緒方センセ？」 「あーホントだ、緒方センセ」 「緒方センセー」 俺、かたまっちゃった。 そこは駅ビルの中にある映画館前。 店員さんいわく最強コーデというビビッドな色したカーディガンにふわふわ水玉ワンピ、リブニーソに、リボンのモチーフがかわいいぺったんこ靴をぺたぺた言わせて、急いで急いで。 先に来ていた巽、発見。 巽、Ｖネックの半袖で、筋張ったカッコイイ両腕になんかすっげーしがみつきたくなって、初っ端きゅーんってなっちゃって、テヘヘ。 ちょっとでかめのバッグ持ち直して、もっと急ごうとしたら。 いきなり巽に声をかけてきた女子ｓ。 カワイイっていうよりキレイ系の本物女子、きっと巽に体育教えてもらってる女子高のコ達だ。 雰囲気的に、前に俺が玉砕した告白相手とちょっとだけ似てるよーな……。 女子ｓの視線が中途半端な位置でかたまっている俺に一斉に集まった。 もちろん巽の視線も。 えっと、どうしよ、この場合他人のフリした方がいいの？ 回れ右した方がいいの？ それとも「妹でーす」って言っちゃった方がいいの？ 緒方センセ、俺、正解がわからないです、だってこんなシチュエーション初めてです！！