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「何やってんだ、かたまりやがって」
「え、そのコ、緒方センセのカノジョですか?」
「ワタシたちと同じ年くらい?」
「うそー」
「妹だ」
「うあっ、えっとえっと、ハイ、妹ですっ」
「うそー」
「ぜんっぜん似てないんですけど」
ぐいっ。
生徒であるはずの女子sの前で、巽、顔と顔がくっつきそうなくらいのとこまで俺を引き寄せた。
「似てんだろ」
あわわわわ、嬉しいんだけど、本物女子の前だと、偽者女子の俺、なんかミジメでカッコワルイです、緒方センセ。
てか、巽、こんなかわいー女子に毎日体育教えてんだよな。
まー女子高の体育教師だから、そりゃー当たり前なんだけど、いいなぁ~うらやまし~……じゃなくて。
むらむら、しないのかな?
ゴールデンウィーク、CMで予告見かけて気になってた映画、巽とデート。
すっげー楽しみにしてたのに、なんだろ、なんか、つまづいちゃった感じ。
しかもさ……席、女子sの前とかありえないっしょ、なんつー偶然、あー、なんかしゃべってる、クスクス笑ってる、やだなー気になる気になる、もう予告終わって本編始まってるけど、頭に入ってこねー。
巽、ほんと、むらむらしないのかな?
ぐいっ
「へっ?」
いきなり巽が席から立ち上がったかと思うと、背もたれにも落ち着けずに隣でそわそわしていた俺まで引っ張って立ち上がらせて、そのまま出入り口にまっしぐら。
バババババババって、派手な銃撃戦がスクリーンで繰り広げられてる中、映画館、出ちゃった。
「た、巽さん?」
「DVD、借りるか」
「へっ?」
「ウチでビール飲みたくなった、とっとと帰るぞ」
俺、ごろにゃーするみたいに、巽のカッコイイ腕にぎゅってしがみついた。
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