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36-春休み!!
<ヽ(*´Д`*)ノ>
<巽さーん、もう着いたんだけどさ>
<ちょっと移動してい?(ノ><)ノ>
<アンケートお願いされて>
<アンケート答えたら三万くれるって!>
<三万!>
<三万だよ!>
<終わったらすぐ戻るね>
<運転気をつけてね。* ゚ + 。・゚・。・ヽ(*´∀`)ノ>
もう絶対絶命だと思った。
春休みの昼過ぎ、一目惚れしたリバティの花柄ワンピースおろして、ショートジャケット羽織って、まっしろスニーカーで、街中の待ち合わせ場所に先に着いて巽のことを待っていた俺。
そしたら声かけられた。
「アンケートに答えてくれたら特別キャンペーン中だから三万あげる」って。
いやーいつもなら、おいしー話には裏があるって、絶対拒否ってたけどさ。
今、春だし?
頭ぽわわ~ん、だし?
春モノ新作買って金欠だったし!?
これから巽とデートってことで必要以上に浮かれていた俺は諭吉さんにガブガブ食いついてしまった。
そしたら「アンケート用紙は会社にあるから」って、一見してふつーっぽいのにゴリラみたいな握力のおにーさんに引っ張られて、裏通りの雑居ビル、六階の角にあるこきたねー事務所まで案内されて?
茶髪で色黒のおっさんとか、腕にタトゥーはいったおにーさんとか、いらっしゃって?
壁にはAVのポスターがべたべた張られちゃってて?
あ、これ、完全アウトなやつだ。
で、これ、気づいたところで後のお祭り、ってやつだ。
狭い個室でアンケート用紙って渡されたのは契約書で、てんぱり過ぎて、ちいせー字で埋め尽くされた説明文読もうにもガタガタ震えちゃって、ろくに読み取れなくて、でも一生けんめー読もうとしてたら、テーブルドンされて「早くサインしてね~」とか脅されて?
サインしないと内臓売り飛ばされる、海に沈められる、そしたら巽に会えなくなる。
そんなの絶対絶命より嫌だ。
俺はボールペンで一番下にあった名前欄に自分の名前を書こうとした。
そのとき。
ドアの向こうが急にドタバタうるさくなった。
最初の一文字を書きかけていたところで、個室のドアが、ばぁん!
「おい、未成年に何やらせようとしてんだ」
茶髪で色黒のおっさんより、タトゥーありのおにーさんより、やたら迫力がおありなキレ気味の巽が息を切らして俺の目の前に……現れたんだよぉぉぉ。
「た、た、たたたたた、た、巽さぁん」
我慢の限界だった。
ボールペン握りしめたままボロボロ泣き出した俺に、巽は、一言。
「何回<た>言うつもりだ、てめぇは」
テヘヘ。ほんとだね。
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