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「巽さん」 「なんだ」 「どーして俺があそこにいるって、わかったんでしょーか」 新作映画を観る予定だったけど、急きょ変更、巽とドライブ。 春休みの週末で混雑していて、のろのろワーゲンの中、助手席で縮こまっていた俺は巽に聞いてみた。 「待ち合わせしていた場所で片っ端から聞きまくった」 「へ……? なんて?」 「えろそうな女、この辺で見かけなかったか」 なにそれひでぇ。 「駐車場に空きがねぇ、やっと見つけて停めてから携帯見てみれば、あのメールだ。電話してもお前は出ねぇときた」 「てんぱっちゃって。内臓売られるかと思って。全く気づきませんでした」 赤信号に引っ掛かって完全停止した車。 まだ街中で、通りには人がいっぱいいた。 あーあ。 巽、きっと俺のこと底抜けにバカだって思ってんだろーな。 呆れてんだろーな。 「コーイチ」 「……はいはい、どーせ底抜けのバカです、よ……」 くいっと顎を持ち上げられた。 持ち上げられたかと思えば横を向かされて、運転席から身を乗り出している巽と、ばっちり目が合った。 「本当に何もされてねぇのか」 あ、あれ……? なんか、すっげぇ……真剣な顔してる? 「さ、されてないよ……? ちびるかと思ったけど」 「バカが」 あ、やっぱ言われた、 「んっ」 俺のことをバカにした直後、巽は、俺にキスした。 半開きだった唇が満遍なく濡れるくらいの……ガチなやつ、でした。 「んっんっんーーー……っ」 で、信号が青に変わると、何事もなかったみたいに離れて車をスタートさせた。 それからが大変でした。 「んむむむむっ、んっんっ、たつみ、さっ、信号信号っ!」 信号で停まる度に巽は俺にぶちゅぶちゅしてきた。 かんっぜん、隣の車から見えてますよ、後ろの車の人にだって見えてますよ、うん。 横断歩道すぐ前で停まったときも、ぶちゅぶちゅされて、通行人にだって目撃されてますよ、ハイ。 「や、やめてよぉ……さすがに恥ずかしい、です」 「うるせぇ」 恥ずかしいのもあるけど、こんなの、焦らしプレイだ。 停まったときだけ猛烈にちゅーされて、当然体はウズウズして、でも青に変わったら当然巽は離れていく、平然とハンドル握って運転を再開させる。 唇にしっかり刻まれた巽の痕に、もう、全身熱くなってる。 窓開けたいけど、ぶちゅぶちゅしてるのがもっとはっきり周りに見えそうで、開けるの怖ぇ。 「ホテル行くか」 ……このエロ体育教師めっ。 「い、行く」 ……巽の言葉に即おけ、な、俺も大概エロでしたっ。 車の中であんなぶちゅぶちゅしてきたから、てっきり、部屋に入るなりおらおらえっちに突入するのかと思いきや。 ……ちゃぷん…… 「どこにも痣とかねぇな」

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