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でも異世界でも現実ってちゃんとあるんですよネー。 「あそぼー」 巽に抱きつくちっちゃなこども。 こどもにくっついているすげー美人。 か・ぞ・く・も・ち。 はぁ、俺、どうなっちゃうんだろ。 蟻の巣みたいに奥行きある洞窟アジトから出て、見張りの人に一応ぺこって挨拶して、夜の荒れ地の外れ、砂漠のオアシスみたいにちょこんと出来上がった緑の野を一人とぼとぼ進んだ。 適当なところでドレスの裾をぼふんと広げ、座って、頭上のずっとずっと遠くに浮かぶ月を見上げる。 この間、放課後、友達とファミレスでごはん食べてから家に帰ってる途中、何気なく見上げた月とまるでおんなじ月。 でもここに友達はいない。 家族もいない。 誰もいない。 ひとりぼっち。 「ぐすん」 俺は、やっと、泣くことができた。 突然の異世界トリップで麻痺していた淋しさが正常に戻って、次から次に涙が出てきた。 「ぐすんぐすん……ぐすっ」 「コーイチ」 びっくりした。 だって気配ねーんだもん。 振り返ったらすぐそこにいんだもん。 暗闇に簡単に溶け込んじゃいそーな黒ずくめの巽が真後ろに。 「帰りてぇのか、コーイチ」 『俺、ここの世界の人じゃなくて……えっと、違う世界から飛ばされたっていうか』 『それで、お前、名前は』 『あ、コーイチ、です』 「元の世界に戻りたいのか」 ぐすぐすしていた俺は巽に抱きしめられた。 「勝手に戻るんじゃねぇぞ」 「ぐすん……」 「ここにいろ、俺のそばに」 「ぐす……、……ほぇ……?」 俺の涙を拭う巽の真顔ぶりに体も心も金縛りに。 視線まで拘束されて、瞬きもできず、ただ鋭い目に釘づけに。 なくなっていく距離を拒むことなんて……できなかった。 そして、キス、された。 あたたかくて、濡れて、熱くなって、ちょっと苦しくて。 でも……心地よくて。 巽の唇にとかされてしまいそーな気がした。 「……な、んで……巽さん?」 「察しろ」 「お、俺……ばかだから、わかんない、です」 「じゃあ、わからせてやる」 草のベッドの上に押し倒された、巽が真上に迫る、あ、やばい、胸きゅん感に心臓破裂しそう、てかなにこれ。 いきなりなにこれ。

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