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14-パラレル番外編★タイムスリップ!
ひょんなことから、俺、タイムスリップして過去に来ちゃいました。
見覚えがあるような、そうでないよーな、不思議な曖昧世界。
うろうろぐるぐるしていた街中で俺は見つけたんだ。
「……うっそ……」
た、た、巽だ。
が、が、学ラン着てる。
も、もっかい言っとこ、巽が学ラン着てるぅぅぅぅ!!
学ラン巽に出会えたことで、急なタイムスリップにてんぱっていた俺は一気にド興奮、もう他は眼中に入らない、ふらふらふらふら、操り人形みたいに誘われるように巽の元へ。
過去の巽は俺のことを知らない、それは当たり前、それはわかってた。
それでも。
「巽……さん」
交差点前、重たそうなスポーツバッグを肩に引っ掛け、赤信号で立ち止まってポカリを飲んでいた巽の視線が俺に向けられる。
染めていない黒髪、前髪ちょっとだけ長め、学ラン下に覗く襟シャツ。
オトナ巽よりもゴツゴツしてない喉仏。
鋭いけど、オトナ巽にはない、浮ついた隙っぽいものを含んだ眼差し。
オトナ巽よりも視線を近く感じるのは身長差がまだそんなにないから。
正しく俺とおんなじ十代高校生……!!
「はぁはぁ、た、巽さぁん」
やばいよやばいよ、はぁはぁしちゃうよ、止まんないよ。
だってあの肉食おらおら体育教師が学ラン着てんだよぉ?
隙あんだよぉ?
今すぐごろにゃーしたいよぉぉぉ。
歩行者信号が青に変わった。
周りの通行人が一斉に歩き出す。
巽はちらりと青信号を見、また、俺を見下ろした。
「なに」
「ふぇっ?」
「あんた、誰」
俺、めちゃくちゃ警戒されてる?
今、ばっちし女装してんだけど、ブレザー+ネクタイ+セーター+青系チェックのプリーツスカート+黒ハイソックスなんだけど、これ、高校生巽の趣味じゃなかった?
「誰、あんた」
「ぎゃっ、逆ナン、これ逆ナンです!! あっ名前知ってたのはねっ、トモダチから聞いててっ! すげーかっこいいコがいるんだよって前に教えてもらった!」
「声でけーよ、あんた」
あーどうしよ、やっぱかっこいい、オトナ巽と違って高校生巽、なんか近い、壁とか距離がない。
「遊ぼっ」
「は?」
「カラオケ行こー!」
隙あり巽にどきどきわくわくが止まらない俺。
巽の方はヒき気味だけど。
「なんかすげーな、あんた」
どうしよう、新鮮です、新鮮過ぎてデヘヘ状態です、コレ。
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