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巽におにゅーの靴を買ってもらった。
他にもいろんなお店に付き合ってもらって、喉乾いたからお茶して、またウロウロして、安めの小物アイテム買ったりして。
「おなかへったー」
「さっきやたら甘そうなの飲んでただろうが」
「抹茶スモアフラペチーノうまかったー!」
晩ごはんは巽の好きなカレーにした、晩ごはんって言っても、まだ六時前だけど。
夕方っぽくない、まだ明るい、きつい西日。
「あの靴かわいかった?」
「さぁな」
カレー屋さんに行く途中、見上げれば前を向いて横顔に街路樹の影を浴びた、巽。
ネルシャツ腕捲りして、Vネックのインナー、すっきりめブラックジーンズ。
体育教師です。
俺の彼氏です。
「じろじろ」
「じろじろ、じゃねぇ、前向いて歩け」
こんな誕生日、初めてだ。
生まれてきてよかったな~、なんて思った、こんなにもしあわせな誕生日。
……さ、さすがにデレ過ぎた、甘々過ぎた、カレーちょっと辛めの頼もっと。
カレーを食べた俺は次に「海行きたい!」って巽にリクエストした。
それから一時間後。
街から離れた、夏休みになれば人がいっぱいの海水浴場、広い広い人工の砂浜。
後ちょっとで沈みそうな太陽。
夕日は海に溶けかけて肌に触れる空気はひんやり、まだそんなに暗くない。
聞いていて心地いい波音。
おっかねー期末テストの呪縛からも解放されて、夏休みがすぐそこまで迫ってるんだなーと。
海を前にして急にハイテンションになった俺。
「コーイチ、お前泳ぐつもりか」
波打ち際へ駆け寄って砂の上にコンバースをぽいぽいした俺、巽にうんうん頷いて。
ばしゃばしゃばしゃばしゃ!
いや、さすがに泳いでないですよ?足だけですよ?
うはーきもちいー!
グラデーションな空きれーだし、遠い向こうの夜景もきれーだし、ちょっと冷たいけど一日歩き回って体ぽかぽかしてたから、ちょーどいい。
「巽さん、きもちいーよ!!」
膝上のワンピースが濡れるのも構わないでばしゃばしゃしながら振り返った俺。
……ん?あれ?あれれ?
あそこにカップル、んで、あそこにもカップル、それからあっちにも、あ、向こうにも?
家族連れとか、友達同士っぽいグループとかは……あれ、ゼロですか?
あ、やば。
ここ、あれか、いわゆるデートスポットってやつか。
ていうか注目されてます?
いきなりテンション上がって海に突っ込んだ高校生のガキに、正直、皆さん呆れてます?
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