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『俺ね、今、男の人と付き合ってんだ』
高校生最後の冬、俺は両親に巽のことを打ち明けた。
放任だし、大学進学しないでアパレルに進むことも反対されなかったし、ちょっとビックリされるくらいかなー、なんて、楽観的に考えていた。
打ち明けたその日、んで次の日、おかあさんは口きいてくれなかった。
とーちゃんからは「気の迷いだ」って延々くどくど言われた……。
『ごめん、巽さん、今日もウチから出られなさそう』
あの日は土曜日だった。
平日放課後寄道禁止、土日外出禁止を食らっていた俺は自分の部屋からこっそり巽に電話していた。
『そうか』
『でも明日は行くから。もう会えないの無理、俺、こっから脱出する』
『まだ半月程度だろうが』
『……だって会いてーもん』
『脱出するんじゃねぇぞ、コーイチ』
巽、来てほしくないの?
俺に会いたくねーの?
俺はすげー会いたいのに、巽も同じ気持ちでいると思ってたのに。
『とにかくお前は無闇に動くな』
『ふぇぇぇぇ』
『泣くな、バカ、もう切るぞ』
『……ハイ』
『ああ、それからな、』
明日、お前のウチに行っていいか。
そして次の日の日曜日、巽は律儀にも手土産を携えて俺んちに初めてやってきた。
とーちゃんはどっかに雲隠れしたけど、おかあさんと会って、雑談して、帰ってった。
息子さんを嫁にください、みたいな劇的展開を勝手に期待してた俺だけど、なんか遠縁の親戚が来たみたいな。
微妙な緊張感とくすぐったさにムズムズした、ふわふわした二時間足らず、だった。
『あんたのことだから』
『ふぇっ?』
『てっきりどっかのちゃらんぽらんかと思ってた』
『……どーいうイミですか、ソレ』
『昂一自身がちゃらんぽらんだから』
『……ちゃらんぽらん、って、どーいうイミですか』
『……。学校の先生だなんてびっくりした、どうして言わなかったの?』
『だって聞かれませんでした、無視されてました』
『……全く、もう』
巽が帰った後、呆れたように笑ったおかあさんを見て、俺は久しぶりにほっとした。
あの時の安堵感は今でもはっきり覚えてる。
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