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23-パラレル番外編★孕んじゃう女装男子!?
「無事に卒業できてよかったな、コーイチ」
自宅マンションから程近い焼肉屋。
今日、高校の卒業式を迎えたばかりのコーイチに上カルビを焼いてやりながら俺は祝いの言葉をかける。
向かい側に座ったコーイチは喜色満面、大きく頷いた。
「うん! 留年しなくてよかった!」
ブレザーにリボン、もしも自分が勤務する高校で見かけようものなら即座に注意するレベル丈のスカート、長めの髪を括るなんかふわふわしたアレ、ああ、シュシュってやつか。
「勉強教えてくれた巽さんのおかげだよー!」
もちろんこの格好で卒業式に出たわけじゃない、わざわざ着替えてきたんだと。
「就職先は見つけたのかよ」
「んー今いろいろ探してる!」
「本気で女物の服屋に勤める気か」
「うん! だって今いっちばん興味あるもん」
次から次に肉を食うコーイチ。
こいつの腹具合、最近おかしなことになっている。
飯を食ってもまたすぐに「おなかすいた~」とほざく、ほざいていたかと思えば「おなかいたい~」と涙ぐむ、食わせていいのか休ませるべきなのか、迷うところだ。
「おい、適度にしとけよ、あと野菜も食え」
「えーおなかへったもーん、肉食うもーん」
飛び散ったタレを頬にくっつけたコーイチ、そりゃあ幸せそうに笑う。
こんな顔をされると食わせたくなる。
甘やかしがちだな、俺としたことが。
■五分後
「……おなかいたい~」
「てめぇ、いい加減病院行け、明日速攻行って来い」
「え~この間行ったよ? 内科……でも別に……いたい~」
コーイチがふらふらとトイレに立つ。
■五分後
「……た、た、巽さん」
トイレから戻ってきたコーイチ。
さっきよりも顔色が悪くなっている。
輪切りの玉ねぎが真っ黒に焦げているのにも気づかないで奴を待っていた俺はすぐさま立ち上がった。
「き、きちゃった」
来た?
一体、何が。
「おおおおお、俺、せせせせせ」
「せせせせせ?」
コーイチは真っ青な顔でテヘヘと笑った。
「……せーり、来ちゃった、かも?」
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