112 / 241

24-2

ぽかぽか行楽日和の日曜日、巽の運転するワーゲンで郊外の動植物園へ家族三人でお出かけした。 「あれ、にゃぁに?」 「レッサーパンダだ」 「あれ、にゃに?」 「フラミンゴだ」 「たっ巽さんっあれは? あれ何だろっ?」 「……アライグマもわからねぇのか、お前」 ダンナ様冷て~、カキ氷みたーい、頭の奥がツーンってしちゃう(涙)。 「あっこらっ一人でまた勝手にどっか行くな、小市!」 「べー」 「ほら、抱っこしてやる、小市」 「たちゅみ(*´∇`*)」 「た、巽さん、えっと」 「俺も抱っこして、とか言うなよ、コーイチ」 牽制された……さすが鋭い体育教師。 でもほんと、もうちょっと俺にも構ってほしいな。 こんな場所で考えるのも何だけど、あれなんです、俺と巽、ご無沙汰なんです。 丸一日求めてきたことだってあった、あの体育教師が、今現在アッチはまさかの沈黙ぶりなんです。 ……俺、魅力なくなっちゃったのかな? ……今日もばっちりメークしてキメキメ女装だけど、もうどれが新品だとか言われなくなったし、ていうかあんまり見られてない……? 巽、俺のこと眼中にない……? これが世に言うセックスレスってやつですか。 「コーイチ」 「えっ!」 「零してるぞ、サンドイッチの具」 「あわわわわ」 施設内の広場でレジャーシートを広げてお弁当食べていた俺、考える余り卵をボロボロ膝に落としていた、鳩に狙われてる、あいつら目つきが怖い。 「はとぽっぽ」 「そうだな、鳩、近所の公園にもいるな」 「あれはー?」 「誰かが連れてきた迷子のチワワだな」 「あれはー?」 「孫をあやすのに疲れて昼寝している年配男性だ」 「あれならわかるーらぶらぶかっぷる」 「指差すな、マナー違反だ」 小市のちっちゃい人差し指を巽の男前な手が覆い隠す。 小市はきゃっきゃ笑ってパパの指にじゃれつく。 巽も笑って小市のちっちゃな頭をゆっくり撫でる。 ……あ、しゃーわせ。 ……うん、これで十分、むしろ有り余る。 「ママ、へーん、ひとりでにやにや、ぶーす」 「はいはい、ママはブスですよー、小市もブスですよー」 「にゃー!」 コチョコチョ攻撃してやったら小市は笑い転げた、ふにゃふにゃしていてあったかい、おなかに顔をくっつけたら日向の匂いがした。 「ママ―ママー」 んで、ちょっとあまい、しゃーわせの匂い。

ともだちにシェアしよう!