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「ほんっと急でアレなんですけど、お願いしますッ、この通りですッ!」
トイレに行くフリして出入り口前の会計のところにいた店員のお兄さんに俺は……餌をねだる動物園のクマみたいに両手を合わせて、お願いお願い、した。
こーいうの、きっと予約必須なんだ、当日いきなりとか、きっと非常識が、って思われてんだ。
でも俺にできることコレくらいですからーーーー!(支払うの(略)(泣))
そしたら店員さんは快諾してくれた。
俺は「巽って言います!ローソクとかテキトーでいいです!」ってあせあせ打ち合わせして、また、お願いお願い、して、テーブルに戻った。
「腹の具合悪ぃのか」
窓際のテーブルで携帯いじるでもなく薄暗くなってきた景色を眺めて待っていた巽。
あ。
かっけぇ。
じゃなくて。
巽、喜んでくれっかなぁ。
なーーーーんて、ちょっとキンチョーしつつ待ち構えてたら、さ。
「タツミちゃん、ハッピーバースデー!!!!」
店員さんsによるバースデーソングと共に運ばれてきた誕生日ケーキ。
店内にいた他のお客さんに微笑ましそうにパチパチされる中、俺の目の前に置かれちゃいました。
当日申込み、練られなかった打ち合わせ、話がちゃんと伝わってなかったよーだ。
見た目的にどう考えてもコッチ側だろうと、誕生日でもない俺、祝福されてしまいました……。
「食えよ、タツミちゃん」
「はうッッ」
ここまで完っ璧に空回りすんの生まれて初めてかもよ、俺。
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