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「ここにサインしろ」 うっそ。 次の仕事が、寝床が、こんなにも早く見つかるなんて。 やったーーーーーーー!!!! 古めかしいシャンデリアやら柱時計やら重厚なインテリアが配された応接間。 文字がびっしり詰まった契約書にろくに目も通さずに浮かれたコーイチはサインしてしまった。 「よろしくお願いしまっす!」 「俺は緒方巽だ、佐藤」 「はいっ! 私、佐藤(偽名)です!」 「俺は狼人だ」 えっ? 「狼人。聞いたことあるか」 ろうにん。 満月の夜に狼になる人狼とは逆パターンの生き物。 つまり満月の夜にだけ人の姿に、後は……狼の姿でいるモンスターだ。 「つまり明日の朝には俺は狼になる」 「う、え、え、え、え?」 「何、驚いてる、契約書に書いてあっただろうが」 コーイチがサインした契約書はすでに狼人ご主人様である巽の手に取り上げられている。 やたら高そうなイスから引っ繰り返りそうなくらいあわあわしているコーイチを見下ろして巽は命じた。 「しっかり働けよ、何せ俺の奴隷なんだからな、佐藤」 あてがわれた自分のお部屋でコーイチはおっかなびっくり一夜を過ごした。 あ、あんなこと言ってたけど、本当は普通の人間だったりしないかな? 冗談だよー騙されてやんのーみたいなノリ……じゃないかな? 残念ながら新ご主人様は決してそのようなノリに走る陽気な性格じゃあなかった。 「あ!!」 朝、とりあえず身支度を整えて大広間へ向かったコーイチは凍りついた。 狼がいた。 ふっかふかなソファでふっかふかな黒狼が寛いでいた。

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